教育福島0098号(1985年(S60)01月)-010page

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研究論文特選

 

読図・作図の能力を高める地理学習の指導

−略地図中心のノートづくりを通して−

 

郡山市立郡山第二中学校教諭

鷲田 洋

 

一、研究の趣旨

 

(1) 研究の動機とねらい

地理学習のねらいは、地理的事象を通じて地域を認識する能力を育成することにある。しかし、現実には地理的事象の羅列や地名、産物等の暗記に終始している傾向にある。そのため地理を嫌いとする生徒が少なくない。他教科をみた場合、例えば、美術科の授業の補欠に出向いた時、生徒たちが彫塑の製作をしていた。実にのびのびと思い思いの創意工夫をこらしている姿はとても楽しそうであり、かつ意欲的であった。

この相違点は作業的な学習が大きな要因になっているのではないだろうかと考えられる。そこで、社会科においても、作業学習を重視する必要性を痛感する。地理学習においては、読図・作図の能力を高めることを意図した略地図中心のノート作りを取り上げることによって、暗記物の社会科から少しでも脱皮できるのではないかと考えた。

(2) 問題点

地理学習に関する関心をみるために、

〈表1〉のような意識調査を実施した。

 

〈表1〉(数値はパーセント)

るために、〈表2〉のような検査などを実施した。〈表2〉数値はパーセント。

 

問1では、実に三十七パーセントの生徒が地理を"嫌い"と意志表示している。さらに、問2では、地図帳などの活用率が十一パーセントと低い。これは、地理嫌いと大きく関係していると思われる。問3・問4は、「身近な地域」野外観察や調査に関するものであるが、その実施率が二十二・五パーセントと低いのに対して生徒の実施希望率は八十五パーセントときわめて高い。さらに、生徒の実態を把握するために、〈表2〉のような検査などを実施した。〈表2〉数値はパーセント。

 

教研式標準学力検査(K形式)

ると、地図の読みとりや地図などの作成面に落ち込みのあることがわかった。

 

この結果をみると「資料活用能力」が最も低いことが読みとれる。さらに詳しく分析してみると、地図の読みとりや地図などの作成面に落ち込みのあることがわかった。

以上の実態からその原因となるものをさぐってみた。

(3) 原因

1) 生徒側から

ア、地理を暗記教科として、断片的な知識のとらえ方をしている。

イ、地図の読みとりや地図作成についての方法や手順が十分に身についていない。

ウ、地図帳を積極的に活用し、その地域の人々の暮しや生産活動についてイメージ化できない。

2)教師側から

ア、地理学習で特に重視されるべき読図・作図指導の時間が十分に確保してやれなかった。

イ、読図・作図能力に大きな効果が期待できる野外観察や調査活動がおろそかになっていた。

ウ、地理学習の中心資料が「地図」

 

鷲田洋先生の授業風景(郡山二中)

鷲田洋先生の授業風景(郡山二中)

 

 

 


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