教育福島0098号(1985年(S60)01月)-028page

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にしました。ぼくは髪形の名前はスポーツがりしかわかりません。ところが今朝、妹が学校に行くのを嫌がっていました。ぼくは「前より今の方が髪形がいい」と言ってやりました。そしたら妹はなんとか気分をなおして学校に行きました。本当は前の方がよかったのですが。先生どう思いますか。

 

●進学の問題では、普段あまり考えないぼくがあせってきたように思います。いやあせるというより、三月十六日に一刻一刻近づいているのを身をもって感じると表現した方がよいと思います。最近考えていることは、今、このことに悩むより、何も考えずに夢中にやること。全力をつくすことがぼくのやるべきことではないかと思います。三月十六日にはやるだけのことはやったという満足感に満ちあふれた顔で受験校の門をくぐりたい。最後に、数えるほどしか班日誌を書くことができないのがとても残念でなりません。

 

昨今、中学校教育の中で多くの問題が投げかけられている。とりわけその多くは学校生活に自分の存在感がなく、学級からはみ出した生徒たちにある。今日こそ各教師が生徒指導の基盤が学級にあることを考え、学級経営に創意工夫をこらし、心のふれ合いを大切にすることの努力が必要に思える。

(大信村立大信中学校教頭)

 

無資源小国の愁い

佐藤勇児

 

学した。旅館では貴重品袋を使わせ、深夜、暴走族の騒音で寝不足となった。

 

かつて、ジュネーブからホンコンへ飛んだ時、機内灯が一つ二つと消され、ジェット機の爆音だけが聞こえる深夜、機内席をはなれてはしゃぎまわり、同乗客が迷惑がっているのもそしらぬ顔の日本人スキーツアーと乗り合せ、いやな思いをしたことがある。また、修学旅行の引率で、奈良、京都を訪れ、ものものしい警備の京都御所や落書き防止用のアクリル板におおわれた柱の目だつ二条城を見学した。旅館では貴重品袋を使わせ、深夜、暴走族の騒音で寝不足となった。

京都御所の約七倍もあると言う北京の故宮博物院は、ものものしい警備も落書きもなく、前門飯店(旅館)ではかぎのない部屋を利用したが、物は盗まれたことはないと言う。北京の大道には「精神文化・社会主義」とか、「好好学司・天天向上」(真剣に学習し日日向上しよう)の横断幕が掲げられ、広い歩道や空地では、拳法(大極拳)に励む人々が朝を迎えていた。

山岳氷河の斜面を登り下りしているスイスの若者達にも出合ったが、国民皆兵の兵役に備えて、集団登山による体力づくりをしていると言う。“大国の谷間に、平和と民主主義の光をはなって生きる山岳国スイス”の姿を見た思いであった。窓辺の干し物に六十フランの罰金をかけているジュネーブや、ガソリン自動車をしめだし、無公害の町を宣言しているツェルマツトにみられるように、スイスは、観光産業をはじめ、山あいの斜面や谷間を利用して、酪農業、醸造業と付加価値の高い技術産業を売りものに、アルプスの屋根裏で、厳しい自然とたたかいながら、我が国よりはるかに高い所得を手にしている。

最近「アメリカの断面」と言う記事を読んだ。“夜半、急に子供が熱を出したので、かかりつけの医者に電話で指示を仰いだら、数日後に高い医療費の請求書がきた。こんなばかなと言うことで、弁護士に依頼したら、医者の請求書は取り消しになったが、更に高い弁護料が請求され驚いた”と言う。アメリカでは、道で転んだら不注意を自戒する前に、まず“これはだれの責任だと考えろ”と教えていると言うのである。これが戦後我が国のお手本となった自由の国、個人主義の国、民主主義の国アメリカの姿なのである。

理性の判断を基本とする自由主義も人権尊重を理念とする個人主義、民主主義も、戦後我が国の動揺期に課せられたものであった。これが末消化のうちに、営利本位の情報化時代を迎えて教育的機能は衰退し、国民的連帯意識は薄れ、日本人にこれまでみられなかったような勝手主義、利己主義が蔓延し、国際化時代の到来とともに海外にまで広がっている。これでは福祉大国どころか、国際的信用は失墜し、孤立するばかりであろう。

アメリカやソ連のような資源大国と違う我が国は、世界一の高齢化社会を迎えつつある今日、地球的視野で日本の風土を理解し、無資源小国が、通商国家として生きなければならない国民的自覚と、国際感覚の豊かな賢い日本人の育成を、国民共通の課題として真剣に取り組むべき時がやってきたと思う。

これらの点について我々教師も授業や日々の教育実践の過程で、たえず念頭において指導する必要があるのではないだろうか。若い世代の職員の情熱にもそれらを是非加えていってもらいたいものである。

(県立磐城高等学校教諭)

 

 

 

 

 


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