教育福島0108号(1986年(S61)01月)-040page
審査結果の講評
〜委員の話し合いから
論文審査会は早朝から熱心な討議が展開され、個別審査が終了し特選及び入選論文が決定した後、四名の委員の意見交換が行われました。
ここでは委員の話し合いのもようの概略を紹介します。
司会 本日は、丸一日がかりの審査、
御苦労様でした。それではここで、各委員さんからそれぞれ御意見等をお願いします。
長谷川寿郎委員
長谷川寿郎審査委員長 では私から今年の論文審査にあたっての感想を申し上げます。まず全体的にいいますと予備審査にあがってきました十四点は研究物としての体裁が整い、資料も精選されています。テーマも教育現場の重要課題をとらえたものが多く、アップ・トゥ・デイトな問題に対するチャレンジの姿勢がみえますね。
蜂谷 剛委員 共通していえることは、現代の児童生徒の特徴である「積極的な取り組みの姿勢の欠如」に対する一人一人の意欲的な取り組み等への学習指導等の研究が多いということです。
大澤貞一郎委員 全体的には、すでに皆さんがおっしゃっているように意欲的に先生方が取り組んでいることに感動しました。しかし、論文の形式からいうと、大部分が実践記録を論文風にまとめたといえるのではないか。
また、抽象的な言葉が多く、資料をみないとわからないというのでは困る。本文を読んだだけでもわかるという書き方がほしいですね。
古関富男委員 私は、全体的に二つほど感じました。ひとつは、個人差に応じた研究への指向が強いということであり、もうひとつは、一人学習とか主体的学習とか言われている自己教育力、自己指導力に着目しているものが多いということです。これは生涯学習という観点からも良いのではないかと思いますね。
大澤貞一郎委員
大澤委員 ただ、論文の書き方という面からは、もっとスパッと要点をつかめる書き方をしてほしいですね。事実の経過だけの記述では論文としての工夫が足りないと思います。しかし、経過報告としては、たしかに感動的なものがありました。
長谷川委員長 ところで、先程から出ています一人一人の尊重という点ですが、抽出児による研究には限界があるということ、子ども一人一人はユニークな存在であり、抽出児の結果を考察しても、一人一人を代表するものにはなり得ないということを忘れてはならないと思います。一人一人に着目することを徹底してもらいたい。その点、今年の論文の中でも全児童の変容に留意しているものは少ない。究極的には、全児童の変容を示すべきですね。
蜂谷剛委員
蜂谷委員 たしかに一人一人が意欲的に取り組むためにはどうすればよいかといったものが多く、児童生徒の自然ばなれ、自意識の欠如といった表現が多い。
長谷川委員長 主題についても、表現の中味を納得しているか、たとえば「考える力」とは何か、 「自己教育力」とは何かなど、もつとつっこんだ研究を深めていく必要があるといえますね。
古関委員 ただ研究方法を身につけてきている先生方が多くなりましたね。それぞれ論旨の一貫性に努力してます。
ただおねがいしたいことは、誰にでもわかる言葉で表現することですね。自己造語は避けるべきです。また全てを数量化して立証しなくとも、客観的な表現、たとえば児童の作文や発言、父や母の発言などで十分に証拠立てることもできます。
古関富男委員
大澤委員 追加資料の扱い方や原稿用紙の使い方等にも気を配ってほしいですね。
蜂谷委員 それに文章にも気を配ってほしいものです。資料も豊富であるが、みにくいものもありました。また文字もていねいに書いてほしいですね。
司会 ありがとうございました。最後になりますが、委員の先生方へ松本義務教育課主幹よりごあいさつ申し上げます。
松本主幹 審査委員の先生方には、お忙しい中、慎重に御審査いただきありがとう.こざいました。御講評や御指導いただいたことを参考に、今後とも現場における教育実践を更に深めて参りたいと存じます。本日は誠に御苦労様でした。