教育福島0108号(1986年(S61)01月)-042page
昭和60年度公立幼稚園小・中・養護学校教職員研究論文
《特選》
診断と治療をとりいれた音読の指導
霊山町立大石小学校教諭
後藤 修
一、研究の趣旨
(1) 研究の動機とねらい
最近の子どもは、声に出して本を読むことが少なくなったと言われる。一方、国語科の授業においても内容の読みとりを重視するあまり、音読の指導がおろそかになっているとの声も聞かれる。
しかし、小学校学習指導要領国語編は、児童の発達段階に応じた「音読・朗読の指導」を明確に位置づけているように、音読・朗読は、国語科の指導において、重視すべき基礎・基本的な指導内容である。
ところが、現在受け持っている児童の音読は、文中での言葉のとらえ方や発声が不正確なものであり、聞き手に内容が良く伝わっていない(表1)。
そこで、読解の指導過程のなかに、音読の指導計画を組みこみ、児童一人一人についてその評価を行い、つまずきを指導していけば、音読の能力は向上するだろうと考え、上記の研究主題を設定した。
(2) 問題点
・読む自信がないため大きな声で読むことができず、発音も不明瞭である。
・漢字の読みが不充分なためその部分で遅くなり、その遅れを取り戻そうと速く読むので、音読をする速度が一定でない。
・語句の意味の切れ目がわからず、いわゆる「弁慶読み」をする。
・文章の内容の把握が不充分なので、間の取り方がおかしい音読をする。
(3) 原 因
1) 教師側から
(ア) 音読の指導の目標、指導内容、方法が具体的でなかった。
(イ) 一人一人の音読能力の的確な評価を行なわなかったため、それぞれの個に応じたつまずきを克服していく方法が見い出せなかった。
2)児童側から
(ア)正しい発音・発声の方法を知らない。
(イ) 音量・読む速度・言葉の抑揚に注意を払わない。
(ウ) 音読を向上しようとする意欲に欠ける。
二、仮説
(1) 仮説のための理論
音読は、小学校学習指導要領国語編第六学年の目標に「ケ・聞き手にも内容がよく味わえるように朗読すること」と記述されているように、ただ声に出して読めばよいものではない。望ましい音読とは、正しく音声が発音・発声され、さらに言葉の意味を正しくとらえ、その言葉の持つ情景をとらえたものでなければならない。
そこで、児童に望ましい音読を達成
表1 音読に対する児童の現状