教育福島0109号(1986年(S61)02月)-051page

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三月に入ると、友だち関係のことで注意することも少なくなったし、学級の雰囲気がぐっと明るくなり、子ども.たちの表情も生き生きとしてきた。

 

五、結果の考察

 

(一) 教育相談を通して

○ 子どもの内面的な問題をとらえ、.心の交流を図ることができた。

○ 子どもの自己表現力を育てるとともに、自己指導力を引き出すことができた。

○ いじめを許さぬ土壌作りに役立った。

ほかのすべてのケースが、教育相談をすることによりて解決されるとはいえないかもしれない。しかし、今までの指導を通して、子どもたちは真剣になって自分たちの言い分を、また考えを聞いてほしいと願っているということがよく分かった。どの子もみんな自分を認めてほしいと叫んでいるように思えた。初めはもじもじしていた子どもたちが、いったん話し出すと、せきを切ったように次から次と自分の悩みを訴え、放課後の時間が足りなくなるほどであったことからも十分うかがえる。

仲間はずれをしてきたA子たち三人が、三・四年生のとき、今と全く同じように仲間はずれにされてきた経験があるということを知ったのも教育相談によってであった。

教育相談を終えた後の子どもの表情は、どの子も生き生きとしていた。吐き出すことによって、心の重荷がおりたからであろうと思われる。

(二) 教室あのね情報を通して

今回のいじめの問題が解決できた大きな要因として、保護者の方々の絶大なる協力のバックアップがあったことを見のがしてはならない。

毎日提供する学級内の情報は、ニュース価値としてはささやかなものであったが、保護者と担任の心と心を結びつけるのに大きな役割を果たしたと思われる。

教室あのね情報を通して、保護者との連携を密にすることにより、指導方針の理解はもとより、学級の動向を知っていただき、それに対する意見や考え、励ましの言葉をいただくなど、本当に大きな協力を得ることができた。

教育相談や教室あのね情報は、誰にでも簡単にできる方法であり、生徒指導にはとても有効な方法であると思われる。

(三) 子どもたちの変容

ささいないざこざは人間である限り日常茶飯事に起きているが、子どもたちはなにか事が起きたとしても、必ずそれは解決できるという安心感を持ってきた。それは本気になって取りくめば道は開けるということを身をもって体験したからだと思われる。

子どもたちは、「仲間はずれはいやだもう二度とこんなことはしない」と言っている。なによりもうれしかったのは、子どもたちがこのできごとを通して精神的に成長してくれたことである、

子どもを信じ、ともに悩み、心を痛め、解決の道へと必死になって取りくんできたことが決してむだではなかったということを子どもたちは教えてくれた。

この事件以後、「雨降って地固まる」のことわざどおり、女子たちのまとまりが出てきたし、ほめることの方が多くなってきた。(資料6)

 

資料6 N子の作文「私の心をかえた事件」より

私もA子さんもC子さんもそのほかの人たちも、今とっても仲よく暮らしています。

五年生の時とは全く違って、男子も女子も仲よく、あんな大事件があったとは思えないほど、おだやかなクラスになりました。

これからも、あんな大事件をおこさないようにしていきたいです。

私にとって、この大事件は、とても勉強になりました。

先生方もA子たちの言動や明るい表情から、その変容を認めて下さっている。今、この子どもたちは、あのようなできごとなど、全くなかったかのように、とても楽しそうに学校生活をおくっている。

 

六、今後の課題

 

子どもを一人一人見ると、すなおで何の問題もないような子が、集団となると個人の意思に反してマイナス面が強く出てくる場合がある。子どもたちのグループ作りには、十分留意し見守る必要がある。

今、当面している問題は一応解決したが、更に温かい交友関係を育てていくためには、全職員が一丸となってのフォローアップが必要である。

今後は、「自分がされるといやなことは相手に対してもしない」という消極的な姿勢から、更に一歩進み、友だちのために積極的に役立とうとする心構え、そして悪と判断したことについては、それをはねかえすだけの勇気と力を身につけ、実践へと結びつけていくようにさせねばならない。

 

明るく生き生きと学習にはげむ子どもたち

明るく生き生きと学習にはげむ子どもたち

 

 

 


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