教育福島0109号(1986年(S61)02月)-050page

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の子どもたちも、今までの事情を知っておられる保護者の方々も大きなショックを受けた。

翌日、D子はノートに「転校」という詩を書いてきた。 (資料4)

 

資料4 D子の詩「転校」

転校やだい

みんなと離れたくないやい

でも引っ越ししなきや

お姉ちゃんがかわいそう

けど お姉ちゃんだけ

引っ越せばいいんだい

でも 引っ越すと

学校までが ちがう学校になる

みんなも○○に遊びに来てくれる

かな 私も遊びに行きたいな

M子の誕生日もあるし

鼓笛隊もあるしな

でも○○もたくさん祭りがあるし

目黒先生の家も近いしな

でも 先生と毎日会えないな

残念だな

※あんなにみんなからいじめられていたD子が、「転校はいや」というまでになってきていたのである。

 

D子のお別れ会当日の朝、教室に一歩、足を踏み入れて驚いた。教室中とてもきれいな飾りつけがしてあり、黒板には「D子さん、転校していっても元気でがんばって下さい」と大きく書かれてあった。

また、D子あての寄せ書きや賞状などが何枚も作ってあった。しかも、それらはA子たちが中心となって計画をたて実行にうつしたということである。

ある賞状には、こんな文面がしたためられてあった。「D子さん、あなたは長い問いじめられてきましたが、いつも素直な気持ちを失わず、元気に登校してきましたので、これを賞します。いじめてごめんネ!」

文章はどうあれ、子どもたちは一生懸命考えて、今までのお詫びの気持ちを精いっぱい表したかったのだと思う。

I先生に「その雰囲気作りをしたのは、先生だ」と言われたが、私は本当になにもしなかったし、なにも言わなかった。子どもたちが私の心をくみとり、自主的にやってくれたことなのである。

また、D子の転校によって一人ぼっちになってしまうM子についても、「M子さんのことは心配しなくてもいいよ。いじめられないようにめんどうみてやるからね」とまで、A子たちは言っている。子どもたちは本当に成長した。

(六)一〜三月「相手の立場にたって考え、助け合う学級集団を育てる」

新年になってからも、C子との教育相談は続けられた。前々からC子は、家族の者には心配をかけたくないので決してこれらのことを話さないでほしいと懇願していた。私としては、お家のかたからの協力も得たかったけれどC子の真剣な表情を見ていると、なにも言えなかった。C子は、家族の中では、あくまでも良い子として振る舞っていたかったのである。

C子が今までの自分の行動を反省するようになるにつれて、少しずつではあるが、A子、B子、そのほかの子どもたちのC子に対する態度にやさしさがみられるようになってきた。

そして、とうとうC子にとって、いや、私にとっても決して忘れることのできない喜ばしい日が訪れたのである。

鼓笛の練習を終え、職員室へ向かう私の後をC子が追ってきた。そして、「先生。私、みんなと仲よしになれた!」と、今まで見せたことのないほどの生き生きとした表情で告げたのである。

あんなに何度も泣きながら訴えてきたC子が、今このような晴れ晴れとした顔で…。目頭がジーンと熱くなった。ランドセルをカタカタ鳴らしながら、級友の待つ昇降口へ走り去るC子の後ろ姿がボーとかすんで見えなくなった。

一週間後、再びC子が追いかけてきた。目が生き生きと輝いている。

「先生。どうもありがとう!もう大丈夫です。もし、また困ったことがあったら相談にのってくださいね」

元気のいい声であった。C子の顔にもようやく笑顔がもどってきた。C子がとうとうみんなの中にとけこむことができたのである。子どもたちは、今まで執ように意地悪を続けてきたC子を学級の同じ仲間として受け入れてくれた。C子の作文からは、その時の気持ちが痛いほど伝わってくる。(資料5)

 

資料5 C子の作文

いいクラスだなあと思ってます。そんないい人たちでも友だちのところをいじめるときもあります。

私も人のところをいじめたり無視したりしたこともあります。

人のところをいじめると必ずいっぺんは自分もいじめられたり無視されたりするのです。いじめられるというより、きらわれ者になつちゃうのです。

私もありますが、きらわれ者になるとイヤです。いつも黙ってて友だちとあまりしゃべられないし、本当にいやな日が続いていました。

担任の先生に、毎日訪課後、廊下でそのことでいつもお話していました。

そして何日かすぎて、多数の人が私にしゃべってくれました。あの時は、本当にうれしくてたまりませんでした。その日の訪課後、そのことを先生にいいました。そしたら、先生も私と一緒になって喜んでくれました。

何日かすぎて、私はみんなと仲よくなりました。人のところをいじめたりしたから、ばちがあたったのかなあと思っています。

やつぱし、みんなといていろんなお話をしたり遊んだり笑ったりしているのが一番いいです。自分と人の関係って難しいなあと思いました。だって、自分が何かすると、その通りに自分にもどってくるんだもん。

「自分にしてもらいたいと望むとおり、人にもそのようにする」という言葉が深くよく分かりました。(略) ※◆線は担任

 

 

 


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