教育福島0109号(1986年(S61)02月)-059page
複雑な教育制度
−ユーゴスラビア・オランダ−
ユーゴスラビアは、社会主義連邦共和国であり、オランダは王国である。いずれの国も国情や歴史的な過程を重視し、学校教育の中で多くの時間をかけて指導している。持にユーゴでは、どの学校のどの教室にも、故チトー大統領の写真が掲額されており、社会主義の学習、労働と自主管理の教育、防衛一国防)の指導が行なわれている。
ユーゴでは、教育制度の見直しがなされ、子どもたちの授業時数を削減することによって子どもたちがより多くの時間を特別授業や教科外活動に費やすことができるように改められ、遅れた子どものための補習授業、特別に進んだ子どもへの追加授業、興味に応じた個別授業、子どもたちの団体やピオネール活動にあてている。ユーゴの最近の動向で注目すべきことは早期教育のさまざまな試みがなされていることである。就学年齢の引き下げ、教科別授業の低学年からの導入、早期外国語教育、優秀児の修学年限短縮などがそれで、教育政策に積極的に取り組んでいる姿がみられる。
オランダでは、本年度から教育制度が改められ、義務教育を十二年間(四歳〜十六歳)とした。教育制度が非常に複雑であり、国民の九十パーセント位は理解していないというのには驚いた。中等学校(十二歳)の第一学年は「橋渡し学年」と呼ばれ、この学年を通じて各生徒に最も適した将来のコースが決定されるしくみになっている。学校は、公立のほか、プロテスタント系、カトリック系、非宗教系の私立があり、保護者の希望によって入学することができる。また、この国では、直面する学校の諸問題を学校自身の力で解決できるよう援助する「教育サービス機関」が設置されており、教育全般に亘って質的改善に努力している姿が感じられた。
[昭和六十年度文部省教員海外派遣 教育事情視察団 安達町立安達中学校長 国分 一夫]
ユーゴスラビア・ホザレパッツ市小学校の熱気を感じる授業風景
オランダ・スヒーダム市小学校の能力別学習
オランダ・バウデン・ド・フィルト校(職業学校)の植物観察授業