教育福島0114号(1986年(S61)09月)-047page
世界の教育は、今。 海外教育事情の紹介
人間関係の上に成り立つ教育
ユーゴスラビア・セルビア共和国
ユーゴスラビアは、言語や宗教の異なる六つの共和国と二つの自治区から成る社会主義連邦共和国である。
義務教育は小学校の八年間で、各共和国が定める教育要領に従って作成される教育課程と教育計画によって行われている。
セルビア共和国ポザレバッツ市の小学校は、通常半日授業を実施している。との子校の児童も自主性に富み、意欲的に活勒している。授業は、黒板と簡単な教具だけであっても、熱のこもった先生の指導はすばらしく、児童は、瞳を輝かせて生き生きと学習している。教育課程が改善されてから教科指導が充実し教科外学習も活発になったという。学校内の文化的行事やピオニール活動などが自主的に行われているのに感心させられた。
わが子まで指導する算数の授業 (べリコトコセビッチ小学校)
社会に対応した中等教育
中等教育は、制度が改善され、普通中等教育の向上と、各種の職業に必要な技術教育の充実をめさして進められている。経済の拡大と社会の発展に対応するための施策である。
ポザレバッツ市の専門課程をもつ中等学校では、新制度によって、一、二年に一般中等教育課程をおき、三、四年に専門教育課程をおいて教育を行っている。
一般課程の教室では、将来を見通した計画によって基礎教育が行われており、先生も生徒も真剣である。やさしい女の先生の質問に挙手をして答えている大きな生徒の姿を口にして、成慨にふけった。専門課程では、コンピュータ教室や語学練習室、各種の実験実習の設備をもつ教室で職業技術の教育が行われており、生徒の技術習得への意気ごみが、熱気を帯びて伝わってくる。指導する先生を尊敬し信頼している生徒の学習態度に接して、心の教育の深さを知り、感動を覚えた。
日本文学も研究
夜間行われていた文学クラブでは、日本文学史の研究に取り組んでいた。日本文化に対する生徒の関心の高さに驚いた。
市内には施設の不足を理由に二部授業を行っている小中学校かある。児童生徒の中には午前か午後のあいている時間、音楽学校に通って、高度の技術を習得している者もいる。
学校のすべての教室の正面に、連邦共和国の統一と発展の柱石となったチトー大統領の遺影が掲げてあった。国家の象徴として、国民の心の中に彼は生きているのである。
昭和六十年度文部省教員海外派遣
福島県第七十一団
福島市立佐倉小学校長
遠戚保吉
日本の歌を披露してくれた(ステファンストヤノビッチ音楽学校)