教育福島0117号(1986年(S61)12月)-005page

教育福島

'86　12月号　Vol.117

目次

　

−表紙絵〜　ベン・シャーン「静かなしんとした部屋で」−

　

提言

福島大学附属教育実践研究指導センター長　渡辺　四郎

　

特集

学習指導の展開

　

随想

告知板

教育広聴会・ほか

研究実践

家庭一般における被服製作の効果的な指導法

養護教育センター通信

巡回就学相談を終えて

レポート〜学校から

派遣教師の目

美術館だより

美術館拡大常設展、ほか

博物館だより

大町町並み・アームストロング砲

羅針盤

卒業予定者の進路希望状況(高等学校)

世界の教育は、今

フランスの教育

　

名画散歩

表紙絵「静かなしんとした部屋で」

ベン・シャーン作

版画集《リルケ「マルテの手記」より》

アメリカの画家ベン・シャーン(一八九八〜一九六九)がドイツの詩人リルケの「マルテの手記」に感銘を受けて制作した版画集で、確かな造形と繊細な色彩が融けあった、彼の代表作です。

(紙・リトグラフ　五七・三×四五・三cm　1968年制作　福島県立美術館)

　

今月号では、ベン・シャーンの代表作のひとつである、ラッキードラゴン・シリーズについてご紹介します。

一九六〇年二月、シャーンは来日し、静岡県の焼津港を訪れました。第五福龍丸事件を調べるためです。

第五福龍丸事件というのは、一九五四年、アメリカが中部太平洋のビキニ環礁で行った水爆実験のために、近くを航行していた漁船第五福龍丸が死の灰を浴び、乗組員の久保山愛吉さんが死亡した事件です。

社会問題に強い関心を持っていたシャーンは、この事件に衝撃を受けました。そして「ラッキードラゴン」(幸せな龍＝福龍丸)と題する十一点の連作を描きました。世界を破滅させるほどの兵器を持ってしまった人類への悲しみと怒りが、この作品の中に込められているようにみえます。久保山さんの悲劇的な死は、私たち人類全体の運命かもしれない。ベン・シャーンはそう語りかけているのではないでしょうか。

　

「ラッキードラゴン」ベン・シャーン作

紙・テンペラ1960年制作　213.4×122.0cm

福島県立美術館蔵