教育福島0117号(1986年(S61)12月)-024page
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声を、まなざしを夢見ながら精魂かたむけた日々でした。
磐梯おろしがまだ肌寒い四月半ば、練習のパターンにも量にも批判的なことばがあるのではないかと予想しながら内心不安まじりの特訓を開始してから一週間、二週間、ただ黙々と練習に励む子どもたちの口からは、ただひと言の抗議すらありません。これは手ごたえがあるぞ、という安堵感とともに、どきどきするような心の高まりをおさえることができませんでした。
陸上競技は孤独な競技と言われます。確かに自分の体力と精神力を頼りに記録に挑戦していくのですから、一面ではうなずけますが、この子どもたちに限っては例外です。技術の習得においては友達の優れた技能を見て学んだり、率直な気持ちでアドバイスし合ったりするなど、個人ごとまたは集団間の教え合いや学び合いの相互援助がうかがわれ、記録への挑戦を越えた集団性や社会性を培うという、大きな目標に無意識のうちに向かっているのです。すごい子どもたちだ、と感激しながら、それだけに個人の能力の違いや、少しでも伸びようとする積極的な面を見い出し、それに刺激を与え伸ばしていかなければならないと、責任を痛感しました。
半年間という長く暑い夏を含んでの期間は、紆余曲折の連続で、さまざまな障害につきあたった日々でしたが、これもまた当然の試練と言えましょう。
この日、大会審判長の役目にふり回されながらも、神経を高ぶらせている私の耳に、「四百メートルリレー第一位、城西小、大会新記録」のアナウンスなど、十四種目のほとんどが一位、二位を占めるという快挙がつぎつぎと伝わってくるのです。子どもたちの顔は、朝のあの輝きが今また倍にも膨れあがり、祝福の握手を交わしながらも賞賛のことばが声にならない私でした。
打てば響く、これらの子どもたちとの出会いのすべてをビデオカメラにおさめるとしたら、生き生きと走り回る子どもたちの外に必ず映る姿がありましょう。それは深い理解のもとで、惜しみない協力をしてくださった校長先生や子どもたちや私にいつも声をかけてくださった諸先生方であり、そして、父母の方々です。これらの暖かい心とのふれあいがなかったら、子どもたちにも私にも今の喜びは生まれなかったと思います。この感激を原動力として、限りない可能性を求め、さらに前進していこうと考えているこのごろです。
(会津若松市立城西小学校教諭)
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土湯の自然
高荒敏雄
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最近「冬虫夏草」という名の奇妙な植物が報道され、多くの人々の関心を集めている。制がん性や殺虫効果もあり、不老長寿の秘薬とされたり、古くから肺病に効く薬として用いられたという。
このキノコが土湯地区で二十種以上も採集されたということは、豊かな自然、恵まれた自然が残っていることを裏付けるものである。
土湯は吾妻連峰と安達太良連峰に囲まれた山あいの静かな温泉地であるが、動植物の分布上から貴重な地域とされている。それは高山帯と山地帯との境界、温帯と亜寒帯との境界に位置しているからである。
だから、特別記念物のカモシカが山野を駆け回り、日本では最も小さいハッチョウトンボが生息し、樹上に産卵するという奇習をもつモリアオガエルの繁殖地としても知られている。また、オオルリやキビタキなどの鳥類の楽園としても脚光を浴びている。
植物に関しては宝庫中の宝庫といわれ、学校のまわりだけでも、レンゲショウマ、エンレイソウ、ツチアケビ、ヤマトリカブト、カタクリ、イチゲ等々数え切れないほどの野草が繁茂し、自生している。
しかし、子どもたちは、あまりにも自然が身近にあるため、自然を正しく認識していないという欠点がある。しかも、自然を守り、育てる伝統を引き継ぐ児童を育成してほしいという地域の人々の期待も大きい。
だから、子どもたちにもっと汗を流
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幻の野草「ベニバナヒトツバイチヤクソウ」
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