教育福島0121号(1987年(S62)06月)-006page

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提 言

 

埣啄の機を求めて

埣啄の機を求めて

県高等学校長協会長 樫村五郎

 

【著者紹介】

樫村五郎・かしむらごろう

昭和二年

九月十四日 田村郡滝根町に生まれる。

昭和二十五年

四月 県立磐城女子高等学校教諭。以後、県立磐城高等学校教頭を経て、県立須賀川女子高等学校長、同原町高等学校長を歴任。

昭和六十年

四月 県立磐城高等学校長となり現在に至る。

昭和六十二年

四月 県高等学校長協会長に就任。

この間、県教育庁高等学校教育課指導主事、管理主事、主幹、課長、教育次長を勤める。

 

今日、高校教育をめぐる諸問題の中で特に速やかな対応を迫られているのは高校中退の問題である。昨年度の全日制での中退者数は千人台を割り、四年振りに減少に転じた。しかし、これを中退率でみると一・四三%で全国平均に比して低い数字とはいえず、また、絶対数からいっても一学年七学級程度の中規模校一校が消滅した計算になるのであって、高校中退問題は、高校教育の根幹にかかわる問題としてとらえなければならない。

 

「埣啄」の機ということばがある。禅宗の用語とされている。埣とは鶏の卵が孵化しようとする時、殻の中で雛がなく声であり、啄とは親鶏が外から卵の殻をつつく音といわれ、転じて機を得て両者相応ずること、得がたいよい時機の意味で使われている。早すぎず遅すぎずほどよい時機、これが埣啄の機であろう。教育活動において最も大切なことは教える立場にある教師と、学ぶ立場にある生徒との呼吸がぴたり一致していることである。教師は生徒の状態を適確に把握し、その理解の上に立って指導する。生徒は教師が何を要求しているかを十分に

 

 

 


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