教育福島0121号(1987年(S62)06月)-029page
〔特集〕
養護学校の生徒指導
養護教育課
一、生徒指導の意義
生徒指導は、児童生徒一人一人の学校生活を充実させていくための援助、助力を中心とした教育活動である。心身障害児の教育においても同様で、児童生徒一人一人の障害の状態や発達の程度に即し、児童生徒が自ら自己の障害を改善克服しようとする意欲をもち、集団の中で自主的、自立的な生活を送ることができるように援助する教育活動である。
更に、生徒指導について、いろいろな角度からみてみると
(一) 児童生徒一人一人を大切にする
生徒指導を進めていくには、その根底に児童生徒一人一人をかけがえのない人間として尊重することがなければならない。教師は、児童生徒一人一人の個性や能力、特性を生かし、その子の努力を暖かく見守り、児童生徒が心身の障害を自ら克服し、一日一日を精一杯生きていけるように援助し、粘り強く指導を重ねることが大切である。
(二) 児童生徒一人一人のあるがままの姿を具体的に理解する
生徒指導は、児童生徒一人一人の具体的な生活や、その中に潜む問題をとらえて、現実的な指導を展開しようとするものである。そのためには、偏見や先入感にとらわれることなく、目の前にいる児童生徒の人間性や、当面する問題をあるがままに理解していくことが大切である。そして、児童生徒一人一人は、学級、学校、家庭、地域の各集団とともに存在し生活していることに留意してとらえなおすことが肝要である。
児童生徒を具体的に理解するためには、その所属している集団の性格や、集団の中での児童生徒の位置など、他との関係にも十分目を向けていく必要がある。また、理解の方法も種々考えられるが、客観的、科学的な診断とともに、家庭連絡帳、日記、各種の学習ノート、あるいは指導記録等によって、多面的に理解するように努めるとともに、共感的な理解についても十分研究することが大切である。
更に、校外学習や職場実習などにおける活動等をも観察し、児童生徒一人一人の生きた姿や悩みをとらえていくことを忘れてはならない。そのためには学級担任だけでなく、学校全体として組織的・計画的に児童生徒の理解及び指導の方法を考えていくことが大切である。
(三) 集団の指導と個別指導とが互いに補足し合い、効果をあげるようにする
児童生徒が所属する集団を望ましい方向へ高めていくことを通して、一人一人の指導を進める。児童生徒の疑問や悩みの多くは、共通した点をもつものが多く、自分一人だけのものでないことに気づかせるよう、可能なかぎり工夫してみる必要がある。
また、みんなで話し合うことによって、お互い同士が励まし合い、助け合う意識や態度が生まれてくる。具体的な指導は、学級指導、学級会活動、クラブ活動のほか、学年・学部の集会や学校行事等で行うことができる。こうした活動を通して、教師と児童生徒及び児童生徒同士の心の交流が深められ、その集団はより質の高いものへ発展するものである。
(四) 望ましい基本的生活習慣を身につけさせる
望ましい基本的生活習慣を身につけさせる場合に、二つの指導方法が考えられる。
一つは、教師が児童生徒に対し、称賛、承認、注意、指示、叱責などを即時に与える方法である。もう一つは、児童生徒の自発性と自主的判断を援助しながら、生活習慣を自ら身につけていくようにしむけていく方法である。
どの場合でも、児童生徒自身が気づかないことについて、しかも必要があれば、教師は個別的な指導や、集団としての指導を工夫しながらこれに対処しなければならない。このような二つの方法は、児童生徒の心身の障害の状態や発達段階に応じて、両者を適切に調和させて指導することが望ましい。
二、生徒指導の役割
(一)生徒指導の進め方
1) すべての児童生徒を対象として、すべての教師の協力によって、あらゆる教育活動を通して行うようにする。
2) 児童生徒の生活に即しながら、社会生活や家庭生活に必要な資質や態度を伸ばすため、具体的・実際的活動として進められるべきである。
3) 児童生徒一人一人の人格を尊重し、個性の伸長を図るとともに社会的資質を高めるようにする。
4) 教師と児童生徒及び児童生徒同士の心の交流を通して、学校における集団集活が生き生きと営まれるようにする。
5) 施設や家庭、地域社会及び関係諸機関との連携を密にして進めるようにする。
(二) 児童生徒の理解
心身に障害をもつ児童生徒を理解するための視点として次のことが考えられる。
1) 児童生徒の生活実態の把握
家庭における養育が、適切になさ