教育福島0122号(1987年(S62)07月)-006page
提言
智育徳育
【筆者紹介】
太田秀夫・おおたひでお
明治四十二年
須賀川町(現須賀川市)に生まれる
昭和九年
東京帝国大学医学部医学科卒業
同年
海軍軍医として軍務に服す(海軍軍医中佐)
昭和十七年
東京帝国大学医学部病理学教室において病理学研究
昭和二十一年
大原病院内科部長
昭和二十三年
医学博士(東京大学)
昭和二十四年
大原病院副院長
昭和三十五年
(財)大原総合病院副院長兼清水分院長
昭和五十九年
(財)大原総合病院副理事長、副院長、清水分院顧問に就任し、現在に至る
福島県学校保健協会長
福島県医師会会長 太田秀夫
祖先から受け継いだ素質を持って生れてきた子どもが、生後、外からのストレスに反応し、それなりの修正を加えながら成人となる。教育もストレスの一種であろう。
「王侯将相いづくんぞ種あらんや」も「瓜の蔓に茄子はならぬ」も素質について、前者は努力によって大きく成長し得ることを、後者は生物学的不変性をうたっているといえる。
教育は、個々の素質を引き伸ばしてゆくために欠かせないものであると同時にその成果を評価するうえでいろいろの困難を伴う。
素質は智、情、意の精神機能と、消化吸収、運動等の具体的機能とによって具現されているが、教育者はその生態を観察し解析することから教育の方針をたて、実施し、評価することになる。たとえば、智的発達や身体的発育とかは、短期的、横断面的に、比較的明瞭に評価し易い反面、短期的評価が直線的に、生涯にわたる長期総体的評価に結びつくと言いきれない面があることも事実であろう。
智育が文明の核とすれば、情、意を対象にした徳育は文化の基となるもので、人間にとって文明と文化とは車