教育福島0122号(1987年(S62)07月)-007page

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の両輪のようなもの、対立的に評価すべきものではない筈だが、近時智育偏重という声を耳にすることが多い。

日本では「いじめ」とか家庭内暴力、非行などの問題を社会的教育的面からだけ捉えているきらいがあるが、その背景に思春期の身体発育、精神発達のアンバランスや社会的未熟性があり、加えて受験勉強等のストレスも加わっていることは否めない。

 

我々医師をとりまく保健医療の分野でも医学、技術の急速な進歩に遅れまいための勉強に追われ、古来の医の倫理、人間性の意義に対する配慮がうすれてゆくことへの反省から、卒前卒後の教育について熱心な会話が続けられてきている。医学技術を駆使して病気を治す事に専念する以上に病人を看てその人間性を洞察する全人的医療を完遂するという使命感にかられてのことである。

福島県では三年来、十代の人間形成を中心に、医学、教育、社会学の分野にわたり研修する会が生れ年々参加者がふえているが、全国的にも昭和五十七年に自治医大看護短期大学学長松本清一先生等を中心に、日本思春期学会が設立され、学校教師、心理学・社会学関係者も参加して包括的学会に発展し活躍している。

教育専門家として教職にある方々が、鏤骨の努力をかたむけておられることには敬意を表するものであるが、教育というストレスに対応している対象者の姿を、全体的な健康の問題として捉えることも一考を要する大切なことであろう。

そのために、家庭、社会、学校と、保健医療・心理学を専門とする方々による包括的検討協議の場を、特に第一線中心に設置し活用することも無駄ではあるまいと考える。

 

なお、現在、福島県医師会会長、福島県保健衛生協会名誉会長、福島県学校保健協会長、福島県医療機関整備審議会委員等の多数の要職にあり、本県の医学、教育、社会福祉活動等に尽力されている。

 

子どもたちの心身の健康を願ってあいさつする筆者(よい歯の学校表彰式にて)

子どもたちの心身の健康を願ってあいさつする筆者(よい歯の学校表彰式にて)

 

 

 


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