教育福島0122号(1987年(S62)07月)-044page

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図書館コーナー

 

福島県出身の児童図書作家

 

画家たち

の図書を専門としている出版社までが、児童図書を出版するようになりました。

児童文学の出版は、近年目ざましい進展をみています。かつては、児童図書といえば、昔話や童話などごく限られたものを限られた人たちが書いていただけで、そのジャンルも確立していない有様でしたが、最近では、絵本、創作文学は勿論、科学書、実用書、雑誌等その分野は多岐に渡り、それを書く作家も揃ってきています。また、出版する側も児童書を専門とする出版社が現れたばかりでなく、大人向けの図書を専門としている出版社までが、児童図書を出版するようになりました。

これは、図書館においても同様で、長い図書館活動の歴史の中で、児童に対するサービスが行われるようになったのはごく最近の話であり、二十年程前まで児童は図書館の利用者としてほとんど考えられていませんでした。しかし、それが今や図書館活動の対象として中心的存在にあるのです。

しかし、その一方にあって児童図書の作家の存在はあまりに地味であるとしかいえません。このことは県内出身の作家も同様で、フェリス女学院の第一期卒業生で「小公子」の訳者である若松賤子や、作品の「巣立つ日まで」がテレビで全国放送された菅生浩以外にその名を知られた人物はあまりいません。

県立図書館では五月に福島県出身の児童図書に関する作家や画家の作品の展示を行い、この人物目録「福島県出身児童図書作家・画家リスト」を作成しました。今回は、これら福島県に関わりある児童図書の作家、画家たちとその作品について紹介したいと思います。

福島県における児童文学の先駆者は意外に数多くいます。さきにあげた若松賤子の他に最近菅井旭県立図書館長が、福島民報に連載した少年向け雑誌「小国民」の編集で有名な石井研堂や東海散士のゴーストライターの噂がある高橋太華、わが国初の児童文学専門家集団「少年文学研究会」を作った山内秋生、「青踏」の同人であり「女傑−ジャンヌ」を訳した水野仙子などがそれです。児童文学に対する関心の薄い明治期にあってこれだけの実績を残した人物を輩していることを、われわれは改めて認識する必要があるのではないでしょうか。

これらの先駆者の実績を前にすると現代の児童文学作家たちの活動は色あせて感じるかも知れません。しかし、児童文学全盛の今日においてその質、量ともに劣るはずがありません。明治期の児童図書は翻訳、伝記などが主体で今回発刊したリストでは、七十四人の人物について掲げましたが、このうちの大半が現代作家です。これらの中から特筆すべき何人かをあげてみましょう。

まず最初にあげられるのは、さきほどもあけた郡山市出身の菅生浩です。一九七四年に「単立つ日まで」で日本児童文学者協会新人賞を受賞し、これはテレビ作品にもなりました。その後も「子守学校」などの作品を書き活躍中です。また、昭和三十八年に第一回NHK児童文学賞を「いやいやえん」で受賞した中川季枝子も代表的作家です。彼女の代表作「ぐりとぐら」のシリーズは現在日本の児童文学で最も人気のある作品として評価されています。この他、第六回赤い鳥文学賞、第二十三回サンケイ児童出版文化賞を受賞した上崎美恵子、第三十回毎日児童小説賞に入賞した一色悦子らも忘れられない作家です。また、本の好きな子どもなら知らない者はいない「吉四六さん」のシリーズを書いているのは霊山出身の富田博之です。

一方、絵のほうでは「大造じいさんとガン」など椋鳩十の作品を中心に書いている北島新平、「ペーターの赤ちゃん」などの代表作をもつ国井節、小学館絵画賞、毎日出版文化賞受賞の渡辺三郎らがいます。これらの作家の作品はいずれも馴染みのあるものばかりですが、その作家が福島県出身と知っている人はほとんどいません。

また、このように中央にでて活躍している作家が多い中で、福島の土地で作品を書き続けている片平幸三や新開ゆり子、佐藤久子などの作家がいることも忘れられません。

さきにも紹介しました「福島県出身児童作家・画家リスト」を市町村の図書館及び公民館等に配布いたしますので、ご覧になりたい方はぜひそちらの方へおでかけ下さい。

また、詳細につきましては、県立図書館児童室までお問い合わせ下さい。

「小公子」の訳者

「小公子」の訳者

若松賤子

「小国民」の編者

「小国民」の編者

石井研堂


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