教育福島0127号(1987年(S62)12月)-035page

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特集〔2〕 −性教育の実践−

 

人間としての在りかた

いのちの尊さを見つめる学習

保健体育課

 

はじめに

 

近年、児童・生徒の性的な成熟の促進化傾向や性意識の変化により、指導上問題となる様々な性行動が増加しており、しかも、低年齢化の傾向にあります。このような状況から、学校における性教育の重要性が強調されております。

従来の学校における性教育は、生理的側面からの性に関する断片的な知識の伝達や対症療法的な指導が中心であり、指導内容の構造化や体系化に乏しく、また、指導に当たっては、単一の価値観のもとに権威主義的で一方的に教えるなど規制的指導の傾向が強いものでした。

しかし、最近は、教育の基本理念である人間尊重・男女平等という観点から性教育の見直しが行われ、その方向づけがなされてきました。

文部省は、現代に即した、また、将来を見通した学校における性に関する指導の在り方を明確にするために、昭和六十一年三月に指導資料として「生徒指導における性に関する指導」(中学校・高等学校編)を作成しました。これによると、学校における性教育は、生物的側面はもとより、心理的、社会的側面を盛りこんだ性の人間学としての「セクシャリティの教育」という考えに立ち、単に男又は女に二分した人間理解を図るよりも、多様化した男性、女性の人間理解を図るため、男女平等の原理や性役割の原則を通し、性のすべてにわたり、人間として、男として、女としての生き方の指導を強く打ち出しております。

県教育委員会としても、生教育についてはその重要性にかんがみ、昭和五十九年発刊の「学校保健・学校安全の手びき」(県学校保健協会編・県教育庁保健体育課監修)に性に関する指導の在り方を明示しておりますが、今後は文部省の指導資料を踏まえた性教育の充実に努めて参りたいと考えております。

 

一、学校における性教育

文部省の指導資料では、学校における性に関する指導の今日的意義と指導の重要性について、次の五つをあげています。

1、生徒の人間形成と性に関する指導

人間尊重の精神に基づき、生徒に人間の性を正しく理解させ、人間としての生き方や家庭や社会における男女両性の在り方などについて学ばせる必要がある。

2、社会の変化と性に関する指導

民主主義思想の普及、科学技術の進歩や経済の発達、社会福祉の充実など社会の変化に伴って男性及び女性の社会的な役割に対する期待が大きく変わってきたことから、男性又は女性としての自己認識やそれに基づく男性又は女性の役割について総合的な観点から考えさせる必要がある。

3、生徒の実態と性に関する指導

最近の生徒は身体的な発達が早く、ともすれば、精神的な発達と不調和になりがちである。異性との交友を望み、性意識や性行動は開放的であり、性行動の体験者が増加傾向にあることから、人間尊重、男女平等の精神に基づく人間の在り方を学ばせる必要がある。

4、性に関する情報環境と性に関する指導

性に関する情報源はマスメディアであることが多く、生徒に対する影響は極めて大きい。生徒が誤った情報や不適切な情報に惑わされることのないように、情報に対する選択眼や対応能力を育てるよう指導を行う必要がある。

5、性に関する問題行動と性に関する指導

性に関する問題行動は、他の問題行動と同様その背景に生徒自身と家庭や地域・学校などの生活環境との間の不適応の状態に起因することが多い。また、性に対する無知や誤解、開放的な性意識、性に関する情報環境、男女差別などの問題が深くかかわっているので、これら性をめぐる問題についての理解を踏まえた適切な指導・援助が必要である。

 

二、学校における性教育の目標

学校における性教育の目標は、人格の完成、豊かな人間形成に資するという観点と、人間の性を生理的、心理的、

 

 

 


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