教育福島0132号(1988年(S63)07月)-006page
提言
心のエッジング
福島県高等学校長協会長
折笠常弘
[筆者紹介]
折笠常弘・おりかさつねひろ
昭和四年
会津若松市生れ
〃 二十五年
東京高等師範学校理科卒業、以降、若松一中、若松女子高、田村高、猪苗代高、喜多方高で、教諭、教頭、校長として勤務。
また、県教育庁社会教育課、文化課、教育センターで社会教育主事係長、主幹、所長として勤務。
昭和六十二年
県立福島高等学校長となり、昭和六十三年県高校長協会長、県高体連会長に就任、現在に至る。
主な論文
○「赤井谷地植物群落の研究」、「背表山調査報告」、「翁島の調査報告」、「扇形ハイサーグラフ」等
スキーで斜面を滑降する際、滑走方向を変えたりスピードを制御したりするには、スキーの滑走面の角(エッジ)を立てその抵抗力を利用するが、このコントロール技術をエッジングと言う。これを体得すれば車のブレーキとハンドルを持ったと同様、方向もスピードも意のままとなりスキーは楽しくなる。しかし、そうなるには相当な訓練が必要である。高速での滑降競技や林立する旗門の回転競技などは、このエッジングコントロールの争いと言っても良い。
今から二十年も前の話である。突然、私の目の前三十メートル位の所にアルペンスキーの三冠王、トニー・ザイラーが、百九十センチメートルのスマートな姿を現した。彼は猪苗代スキー場のカベ(急斜面)の上でスキーを止め、しばらく眼下に広がる町並や湖を眺めていた。私は県内の高校生たちとそこで旗門を立て強化練習をやっていたのだが、生徒たちはザイラーを見ようと麓に下って行ったので独りカベの中段で休んでいた。彼は斜面に立てた二十双旗ほどの旗門の列を見ると私に手を上げ「ヤァOK?」と言う。「どうぞ!」と答えると、軽やかにジャンプして旗門に突進した。スキーをピタリと揃え、しなやかに膝を動かし、素早くエッジを切り替え