教育福島0132号(1988年(S63)07月)-007page

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てターンし、疾風のように旗門を通り抜け麓へ滑り去った。夢のような出来事に感動しながら彼を見送っていると、やがて生徒たちが戻って来た。私は興奮しながら説明した。そして彼の残してくれた素晴らしいシュプールを生徒たちと観察した。各回転の内側ポールを結ぶように、鋭い二本のエッジ跡が残っていた。「凄い!切れ味」誰かが言った。堅い雪面に残る鋭いエッジングの跡が物語る鍛えられた脚力、何の荷いも力みもない自然な美しい滑り、無駄のない洗練されたターン、アルペン三冠王の底力を垣間見る幸運に恵まれ、感動したのであった。

我々の生活の中でもエッジングは大切な心であり行動の基本でもあると思う。横滑りし易い心の歯止めになり、走り易い言動の節度ともなる。また物事のけじめ、行動の踏み切り、方向づけ、切替え等の力でもある。

それは今、豊かさの中で育つ子どもたちに求められている「心身のたくましさ」を造る大事な要素となり、他に押し流されず主体的に生きる心と実践力になるものと思う。また新指導要領の中心的課題である「人間としての生き方、在り方」を考える際、当然主体性、自発性、自律性等、自立する人間としての力が必要となるが、それには行動のハンドルとブレーキに相当する、エッジング能力の有無が大事になろう。それは人生を楽しくするに必要不可欠の力だからである。

こうした心情や力は、幼児から繰返し実践されることで培われるものである。日常生活の中で親と子、先生と生徒、上級生と下級生、学習と遊び、公と私などエッジングすべき場は多い。物事をしっかりと区別し、その存在や背景や価値を認識して適切に対応するエッジング精神は、これからの変貌著しい社会に生きる人間の知恵としていっそう大切になるであろう。今後の教育の中で特に配慮したいものである。

 

なお、昭和三十六年と四十五年に天皇、皇后両陛下を赤井谷地・裏磐梯ご案内。五十九年に天皇陛下を赤井谷地に御案内している。

理科講座で植物について説明する筆者(吾妻山・酸ケ平にて)

理科講座で植物について説明する筆者(吾妻山・酸ケ平にて)

 

提言

 

 

 


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