教育福島0132号(1988年(S63)07月)-059page

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世界の教育は、今。 海外教育事情の紹介

整った環境で厳しく指導

−イタリア−

ミラノから南東に八十キロメートル離れた人口八万人の小都市、クレモアに六日間滞在した。この間、クレモア県教育委員会をはじめとして、スタンが農業技術専門学校、イピアル国際バイオリン製作学校、アセリ理系高等学校、マニン古典高等学校、ピエトロ・バッケーリ測量技術専門学校、ベルトラーミ商業技術専門学校、ジャネロ・トリアニ工業技術専門学校といった多くの高等学校を訪問し、研修できたことは幸いであった。

イタリアの学校教育の基本的政策は、すべての者に対し十四歳まで無償の義務教育を与えることである。一九二五年に制定された教育制度は、最近になって見直しの声が高まっており、難しい時期にきている。義務教育に続く後期中等教育としての高等学校のうち、今回訪問した学校は、バイオリン製作学校のみ四年制で、他はすべて五年制であり、一貫した教育が実施されていた。高校への進学については、中学三年次の終りに実施される国家試験に合格すると進学できるが、どの学校も成績の悪い生徒や、やる気のない生徒に対する落第や留年の措置は厳しく、特に測量学校では、卒業できる生徒は入学者の六十パーセントと聞き驚いた。

20人のクラスでのびのびした授業(マニン古典高等学校)

20人のクラスでのびのびした授業(マニン古典高等学校)

特色ある普通高校

科学系大学進学のための理系高校と文化系大学進学のための古典学校を訪問した。ともに九十五パーセントの進学率である。理系高校では、宿題のレポートを見せてもらった。びっしり書きこまれたレポート用紙の枚数にも驚いたが、それに対する先生の助言であろうか、字句の多さには何か心のこもった指導が感じられた。参観した物理の授業では、二十名のクラスで四名ずつのグループがそれぞれ別の実験をやっており、種々の実験が簡単にできるように工夫されていた。座学での理論を実験で検証することに重点がおかれていた。マニン高校では午前中で授業が終り、後はすべて家庭学習である。宿題の多いことで有名であり、四時間の予習をしないと投業についていけなくなるそうである。

技術指導に誇りをもつ職業高校

バイオリン製作学校は世界的に有名であり、日本人も六名の若者が学んでいる。百四名の生徒に対し、教員五十八名という恵まれた指導体制のもとで、熱心に製作実習に取り組む生徒の姿は印象的であった。農業学校では、完備した実験室での実験や百四十頭の乳牛を有する農場での実習をとおして総合的な農業技術を習得させており、地域の重要産業である農業の担い手の養成に誇りを持っていた。商業学校や工業学校でも感じたが、普通高校との格差を感じなかったのは、実学を重んずるこの国の風潮のせいであろうか。

研修により、今までと違った視点から日々の教育活動を見直すことができるようになったことは、収穫であった。

(昭和六十二年度文部省K教員海外派遣第三十一団県立岩瀬農業高校 教諭 石川恪治)

制作に励む生徒たち(イピアル国際バイオリン製作学校)

制作に励む生徒たち(イピアル国際バイオリン製作学校)


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