教育福島0133号(1988年(S63)09月)-006page

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提言

 

「役に立つ」理科教育を

 

「役に立つ」理科教育を

福島大学教育学部教授(附属中学校長併任)

千葉 茂

 

[筆者紹介]

 

千葉 茂・ちばしげる

昭和六年

二本松市に生まれる

昭和二十九年

福島大学学芸学部卒業

県立高校教員

昭和三十三年

福島大学学芸学部助手

昭和四十一年

同 教育学部 講師

昭和四十八年

同 助教授

昭和五十六年

同 教授

昭和六十三年

同 附属中学校長併任

 

あるメーカーのスポーツドリンクの缶にある表示「C◆ 18.5mEq/◆」を解読すると、この飲料には約○・一パーセントの食塩の含まれていることがわかる。このことは、二五〇ミリリットルの缶一本中に約○・二五グラムの食塩を含むことを示しているので、一日に十本も二十本も飲むのでなければ、食塩の摂取量としてはそれほど問題とはならず、その表示は解読できなくても、また、見落としたとしてもどうということはないであろう。

しかし、別のメーカーの漂白剤に主成分として次亜塩素酸ナトリウムが含まれており、トイレ用洗浄剤に塩酸が含まれていることに気が付かず、まして、これらを混合すると有毒な塩素ガスを発生することを知らずにいれば危険である。実際、狭い密閉した風呂場などで混合して使用すると死に至ることがあるということを実証する事件が最近のニュースにあった。

このニュースの場合、次亜塩素酸ナトリウムは酸性にすると塩素ガスを発生すること、塩素ガスはかつて毒ガスとして使用された事実があり、吸いこむと気管などが侵されて生命にも危険があることなどは、高校の化学の教科書には載せられていたはずである。自然化学はもともと、自然界の真理を追究することにより、人類の生活の向上をはかることに目的があったはずである。もし、この程度の知識がすべての人たちの所有物であって、すぐにも利用できるものであったならばこのような事故は未然に防止されたであろう。

 

 

 


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