教育福島0134号(1988年(S63)10月)-007page
![]() ![]() ![]() |
![]() ![]() |
![]()
生徒の能力・適性を伸ばす教育(コンピュータを学ぶ西会津高校生)
新制高校発足直後の進学率は四十二・五パーセントであり、それが昭和四十年代には七十パーセントを超え、五十年以降は九十数パーセントを維持している。必然的に高校は多様な能力・適性、進路希望を持った生徒を受け入れることになった。進学率が二十パーセント前後であった日制中学校を原型としてスタートした高校は、普通科、職業科等の別はあっても、ほぼ同様の教育の実施を維持していくことは、理念的なものはさておいても、この面から困難になってきた。現象的には、落ちこぼれ、非行、中途退学等のいわゆる学校不適応の問題が生じてきたことは周知のことである。
そこで、前回の教育課程の改訂では、例えば選択幅の拡大、習熟度別学級編成の導入等を図って、それぞれの高校がその実情に応じて多様な教育が展開できるようにされた。しかし、全体としてみると、そういう仕組みを作っても一向に期待している方向に動いていないように思われる。いろいろな面で違いがあるA高校もB高校も、また同一校でも生徒の適性や学力に関係なく、同一の教科書で同一内容、同一レベルの教育を実施し、またそのレベルも高いものになり勝ちである。
直接には、同じ高校である以上違いがあってはならないという学校、教員サイドの建前意識の問題だが、背景には、子どもを、その子なりの個有の能力、適性を伸ばしていこうということでなく、それとはかかわりなく大学、それもできればいわゆる有名大学に進学させたいという親の意識、そして親にそう意識させる我が国のいわゆる学歴社会構造がある。
根本的には、学力だけ、学歴だけで評価する風潮を是正しなければならないのだが、それには時間がかかる。それまでの間、多くの生徒の折角の才能をついばみ、時には犠牲を強いるというようなことがあってはならないと思う。現在作業中の教育課程の改訂でも高校教育を個に応じて一層多様なものにという方向で検討されている。この仕組みをできるだけ活用する努力を教育行政当局、学校、教員に望みたい。
提言
![]() ![]() ![]() |
![]() ![]() |