教育福島0134号(1988年(S63)10月)-030page

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杓が電子消毒され、行き交う人も国際色豊かで、日本の心を取り戻すのは無理になったのかと、いささか残念に思った。太秦は、テレビや映画のシーンのセットがたくさん並び、銭形平次、北町・南町奉行所、茶店等、子どもを連れてくれば楽しく過ごせると思いながら、撮影所を後にした。

家も心配になってきたが、旅心に誘われて奈良のシルク博覧会へ行くことにした。興味あるなしにかかわらず、入れる館すべてに顔を出した。古代中、国科学館、世界最古の地震計、羅針盤など、しばらく四千年の昔に身を置いたので、かなり古代に詳しくなったような錯覚に陥った。しかし、翌日はこれを否定するかのように、全く逆の岐阜未来博覧会に案内された。車三千台が駐車できる会場は、さすが未来博にふさわしかったが、歴史の重みを増す日本の伝統文化に触れてからは、見る物が興ざめで、足どりは重くなるばかりだった。

今回の旅では、時代の変化を強く感じ、いろいろと考えさせられた。

(田島町立荒海中学校教諭)

 

ティー・タイム

 

ティー・タイム

新しい家族

 

子供の個室

東京都立大学教授・心理学

詫摩武俊

 

中学生になるころから、子供は自分の部屋を欲しがります。昭和六十二年八月に実施されたNHKの世論調査によると、中学生の四十二パーセント、高校生の五十七パーセントは自分の部屋をもっています。住居にゆとりができたのでしょう。しかし、なかには父親の書斉、母親の居室もないのに、二人の子供がそれぞれ個室をもっている家庭もあります。なかにはその個室の中に専用の電話、専用のテレビをもっている子供もいます。

住居の事情が許すのであったら、子供に個室を与えるのはよいことです。自立性が育ちますし、ひとりの時間、ひとりの空間をもつことによって自分の心を見つめるようにもなるからです。

子供の個室は、そこを勉強、就寝のために使用するということを初めから親と子の間でしっかりと約束しておくべきだと思います。家庭はホテルのシングルルームの集合ではありません。家族が集まって食事をしたり、談笑したり、テレビを見たりする場所がなくてはなりません。二台以上のテレビがあっても子供の部屋に置くべきではありません。普通の家庭では、電話は居間にあれば十分でしょう。

思春期以降、子供はひとりになりたいと思うときがあります。そのとき空間的に隔離された場所は必要ですが、子供をいつも個室の中に追い込んではなりません。家族とともにいる時間を楽しいと思うようになる雰囲気が家庭には必要です。

個室を与えたら生活に自立性をもたせなくてはなりません。掃除は自分でやらせましょう。洗濯物も自分で持ってきたら洗うというようにしましょう。その代わり、そこは子供の部屋ですから親も入るときは声をかけるとか、ノックをするようにして下さい。子供の留守の間に入って掃除をすることも、まして引き出しの中を点検することも慎しんでください。子供はこのようなことを嫌い、そのことが分かると親を信じなくなります。

電気器具による火災には十分に気をつけてください。庭に勉強部屋を作るとか、少し離れたところにアパートを借りるということは余程、慎重にしてください。親の目が届かないので非行仲間の集合場所になることがあります。住宅の事情で個室が与えられないときは部屋の一隅、廊下の隅をカーテンで囲むだけでも十分です。視覚的に遮られただけでも人は落ち着いた気分になれるのです。

 

 

 

 

 


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