教育福島0135号(1988年(S63)11月)-006page

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提  言

教育改革に憶う

福島県文化功労者 坂 本 淺次郎

[筆者紹介]

 

[筆者紹介]

坂 本 淺次郎・さかもとあさじろう

明治  四十年 いわき市瀬戸町に生まれる

大正  十三年東京商工学校卒業

昭和   二年勿来町に帰郷し家業を継ぐ

同  十六年 勿来町議会議員

同  二十八年 福島県社会教育委員

同  三十年 福島県議会議員

同 三十七年   同  農政委員長

同 三十八年   同  運営委員長

同  四十年   同  副議長

同  四十七年 福島県人事委員会委員長

なお、現在は(財)松村総合病院常務理事

表彰

昭和五十二年 勲五等旭日双光章

同五十四年 自治大臣賞(地方自治功労者)

同六十三年 福島県文化功労賞(芸術部門)

 

昭和五年私が二十三歳の春であった。弟の成城学院高等部受験に同伴して上京した時、講堂に父兄が集められて、院長の小原国芳先生一当時玉川学院の院長でもあった)から建学の理想及び自由教育の主張等について一時間半ほどの講話をお聞きした。後日神田の三省堂で小原先生著の「母のための教育学」と題した本に出合い、早速買い求め熟読してみた。家庭における子どもとの接触は父より母の方が多いものと見て、世の母に棒げた本の様である。五十八年も昔の話であるが、今でも私の、心に強く宿っている、要約すればあの自由主義教育が、「子どもは愛育すべし、しつけは厳しかるべし」と、「家庭教育と学校教育は併進することを理想とする」との二点を中心に説かれていたのであった。

さて、現代の教育理念と教育方針は、更に社会教育・生涯教育が加えられ、その上教育の機会均等の主張が政策として打ち出されて、学校は増設され校舎は改築され、今や日本の教育に関する理想は世界に誇りうる水準に達した筈である。しかし、現況は形こそ整いながら内容の点において憂慮すべき面が多々浮かび出ている。家庭内及び校内暴力や非行の低年齢化等に見られる心の貧しさは、わが国の将来を考えるとき、放置し得ない状況にあると言えよう。その原因は、社会的環境、戦後のわが国の伝統に添わない教育改革等が挙げられようが、これらの弊風を改め、心豊かな、社会的、国際的人間を育成するため、有能な人材の養成が急務であると思う。

去る十月十七日の新聞報道によれば、県教育委員会は、新学習指導要領に対応して教員の講習会を開き、本年度は三千六百人を

 

 

 


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