教育福島0135号(1988年(S63)11月)-007page

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受講させるとのことだ。実に喜ばしいことである。正しい教育理念を持って教壇に立つ人の学識の影響と人格の感化は、終生教え子から離れないものである。

私は教育には素人である。しかし、臨教審の答申等を踏まえて作成されている新学習指導要領など実に優れた教育指針が打ち出されていると思う。これに対して批判や反対の声もあがっている。もとより、言論の自由が保障されている現代社会である。どのような立場での意見も自由に述べられてしかるべきである。批判であれ、反対意見であれ、原案より一層の進歩的、建設的対案を伴っての意見であれば、それは当然尊重されるべきで、私とて、その考えに共鳴することは惜しまない。とは言え、私の管見によれば、十分検討に値する対案は示されているようには思われず、それが残念でならない。

科学も技術も予想以上の大進歩をなし遂げ、私たちの生活文化も史上最高の水準に達していると思われる現代文明の中にあって、なお、数千年前の中国の古賢の「悪下 利口之覆二 邦家一 者上」(利口の邦家を覆す者をにくむ)と言う言葉をもって現代の世相を借問せざるを得ない事を私は遺憾に思う。

私は大正二年に小学校に入学した。当時は硬教育を是とする先生と、新教育を受けた師範学校出身の少数の先生がおり、昭和の初期になるとダルトンプランや小川正行先生等の新しい教育学説が取り入れられ、その一方では小学校国語読本にスパルタ教育に関する項目なども載っていた。異る考えが共存し、その中で模索を続けながら子どもたちの心に訴えかける教育が行われていたように思う。

教育は国の基本である。生涯学習という立派な方針が確立した今、教育の未来を支える各機関の方々と教職員の方々の責任と義務が重大である事を思うと、心からこれを支援し、深い感謝の念を抱かずにはおれない。どうか立派な良識を備え、国際社会に通ずる人を生み出していただきたい。

 

●坂本氏と能楽

坂本氏は、大正八年、十二歳で観世流謡曲を習い始め、昭和二十四年観世流師範を取得。六十三年には宗家直属の職分家に次ぐ準職分に認定された。

この間、観世流の第一人者として潮調会を主宰、県芸術祭参加をはじめ、多くの会社、学校で能楽の指導に当たり、本県古典芸術の普及発展に貢献している。

佐藤栄佐久県知事より晴れの表彰を受ける筆者(左)

佐藤栄佐久県知事より晴れの表彰を受ける筆者(左)

 

 

 


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