教育福島0135号(1988年(S63)11月)-023page
随想ずいそう
自然との出会い
今村ともえ
只見町は、豊かな水、たくさんの緑、澄んだ空気と、すばらしい自然に恵まれたところです。新採用として初めてこの町へ来てから今年で四年目になります。私の家がある須賀川市から電車で五時間ほどかかり、採用というきっかけがなかったら、一生訪れることもなかったところかもしれません。巡り合わせとは不思議なものです。
見知らぬ土地に一人で赴任し、心細い思いをしたあの日から今日までの生活は、何もかもが初めてで、人生の中ではほんの一部分にすぎませんが、とても大きなウエイトを占めています。赴任した日が何かとても昔のことに感じられるのは、この期間にたくさんの貴重な体験をしたからでしょう。自分自身が自然に触れ、自然の中での人々の生活を知ったことはとても大きなことです。
春には山菜、夏は川魚、秋は木の実やきのこなど、自然の幸が豊富です。学校給食にぜんまいが出たり、幻の魚といわれる岩魚のつかみどり大会が行われたりすることを他の地域の人が知ったら、きっとびっくりするでしょう。きのこ類で珍重されている松たけも、ここに来て初めて食べたのですが、以来、季節になると毎年その香りを楽しむことができるようになりました。秀節が織り成す風景はすばらしいもので、やわらかなぶなの新緑から夏の目に染みるほどの深緑、やがて紅葉し、葉を落とすまでの一コマ一コマは、まるで写真集をめくっているかのようです。只見川の雄大な流れは心を満たし、時には一面の霧の下にその姿を隠して、神秘的な現象も見せてくれます。川面に反射した太陽の光は、山々の息吹を感じさせます。自然の恵みがあふれているのです。
しかし、冬には一転し、避けることができない自然の厳しさに直面します。豪雪地帯である只見の雪国の生活です。灰色の空、白一色の世界、来る日も来る日も降り続く雪に半年近くも閉ざされてしまう町。家を守るためのさまざまな準備が整えられ、雪かたしの仕事は休む日がありません。大切で、とても大変な仕事です。雪のための危険や雪のための苦労のなんと多いことでしょう。雪の冷たさに対して人々は温かく、この雪の重みに何度か押しつぶされてしまいそうになった私を励ましてくださいました。厳しい冬をじっと耐え、春を待つ心情に触れたとき、私の中にかけがえのないものを得ることができたように思います。
自然の中で、自然と上手に共存している人々。自然を大切にし、侮ることなく、さまざまな工夫や生活の知恵をめぐらせての生活に接し、私の世界が大きく広がりました。ここですばらしい体験ができることに感謝し、これからも自然に対する人間のあり方というものを見つめ続けていきたいと思います。
(只見町立只見中学校主事)
青い目の親善大使
大和田信治
「はじめまして」彼女はたどたどしい日本語で私にあいさつをした。彼女が、一年間、富岡高校で学ぶことになったオーストラリアからの留学生、ヘレン・ジョイ・ゲラーティである。
彼女を迎え入れると決まった二か月前から、私の身辺は急に忙しくなった。本校としては、初めての外国からの留学生受け入れである。そのための何回もの会議、カリキュラム作成、日本語教授の方法等。これらの事を考えると、私の不安は、日に日に大きくなっていった。
私の勤務している富岡高校は、卒業生の七割は就職という女子高校である。生徒のほとんどは、これまで外国人と接したこともないだろう。この中に言語、風俗、習慣の違う彼女が入ってくるのである。生徒たちはうまく受け入れてくれるだろうか。こんな心配も