教育福島0136号(1989年(H01)01月)-055page
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世界の教育は、今。海外教育事情の紹介
貧しさの中で豊かな教育の工夫
−ユーゴスラビア−
今回の訪問地レスコバツ市は、首都ベオグラードの南東二百八十キロメートルの所にあり、そこで四日間にわたり、小学校六校と音楽学校一校、「レスコバツ・コンミュン教育研究所(日本の教育委員会)」を訪問した。以下、その教育活動を紹介したい。
経済的な貧しさの中での教育活動
「我が国は経済的に貧しくて〜」という教育研究所長の説明のとおり、どの学校も石造りの古い校舎で、教室は狭く、教材教具も貧弱であった。写真(1)は物理の授業風景であるが、教室環境は簡素であり日本の小学校とは大きく違っていた。ただ、ユーゴの英雄チトー大統領の肖像写真が、どの教室にも正面にしっかり飾られていたのが印象的であった。
参観授業は、すべて一斉指導の形態で行われていた。写真(2)は(1)と同一授業の記録であるが、教卓に一組の実験器具があるだけで、代表生徒の実験で学習が進められていた。
さらに、経済的な貧しさは「二部制」の授業によくその事情があらわれていた。「二部制」とは、午前と午後に生徒を分けて登校させる制度である。半日で十分な教育効果を上げなければならない苦しさを感じてきた。
発表力を重視した教育活動
訪問したどの学校も、「積極的に話す(発表する)」ことに指導の重点を置いていた。教師の発問に対する子どもたちの反応は積極的でわれさきに挙手(写真(1))して発表しようとしていた。「なぜ話すことに力を入れているのか」と質問したら、「日本では"沈黙は金なり"というが、この国では"沈黙はバカなり"」との返事に一同爆笑であった。
「自主管理」による生徒指導
生徒指導はどう進められているか、今回の訪問でもこのことは視察団の大きな関心事項であった。前記の「二部制」でも、「半日子どもが自由に生活することについての学校としての対策は?」に対し、「何もない。すべて家庭と本人の自主管理にまかせている。一部生徒は課外活動(写真(3))などに参加している」とのことであった。また、子どもたちの自由な服装一化粧、イヤリング、マニキュア等)についても「親の責任の範囲であり規制はない」とのことであった。そして、逆に「日本では、いじめ、しつけ、自殺が大きな問題となっていると聞くが、豊かな国ほどそういう問題が多いのではないか」と指摘され経済的な豊かさが必ずしも教育の豊かさにはつながらないことを痛感させられた。
昭和六一年度文部省教員海外派遣第十団
二本松竿中寺校 教諭 小澤悌一
写真(1) 先生の質問にハンドサインをおくる生徒たち (シニシャや一二ッチ小学校)
写真(2) 代表生徒による電流回路の実験 (シニシャ・ヤーニッチ小学校)
写真(3) アンサンブルの演奏を楽しむ生徒たち (スタニフラフ ピニチキ初等音楽学校)
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