教育福島0138号(1989年(H01)04月)-055page

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世界の教育は、今。

海外教育事情の紹介

徹底した個人尊重の教育

−スウェーデン−

スウェーデンの初等教育は一八四二年に義務制となり無償化されたという歴史をもっている。現在、大学を含めてほとんどの学校で教育費は無料であり、教科書、教材・学用品・給食費にいたるまで、ほとんどは国及び地方自治体の負担でまかなわれている。

少ない人数でその子にあった教育を

「子どもの能力を偏見なく認め、その一の適性を探り、その力を最大限に伸ばす手だてを実践するのがスウェーデン教育である」と、誇らしげに語ったイエーブレ市教育長の言葉どおり、学校訪問の際には教え込むことを前面に出した一斉授業は全く見られなかった。「起立、礼」「始めましょう」もない。子どもたちは、思い思いの姿勢で教師の発問に耳を傾け、迷いがあれば教師に相談したり自由に立ち歩いて参考文献のところへ出かけたりする。授業中、別室で個別指、導を受けて戻ってきたり、音楽教室に出席するために教室から抜け出したりもしている。つまり、その子の能力・個性に合ったその子のカリキュラムが組まれているのである。

スウェーデンでは、一学級の定員か低学年では1二人ぐらい、高学年でも一十人程度で徹底した個人尊重の教育が行われている。スルビー校訪問の際「義務教育は全児竜に責任をもつことであり、授業についてくるのが困難な子どもにも責任をとることである」と語った教頭の自信に満ちた言葉が印象的であった。当然すぎる一言葉ではあるが、ハンディキャップを持つ子どもたちの教育や、経験・体験を重視する教育、とりわけ、子どもの原体験のチェック、個人の体験進歩をチェックするあり方にその具体的な実践の姿を見た。また、障害や問題のある児童を抱えている学級には補助の先生がつき、種々の教育機器が活用されていた。

イエーブレ市(人口約九万人)議会では毎年二百五十人の移民・難民を受け入れることを議決した由、参観した校長区十三区十八校のすべての学校で人道主義の立場からすばらしい教育がなされていた。アンティシュべ校には十一か国の外国人子弟が在籍していた。「わたしたちはこの子らのためにスウェーデン語よりも母国語を大切にした指導をしている。他国語を話す子が一人でもいると専任指導員が巡回指導するようになっている。母国語を週四時間程度指導し、母国語による生活が失われないようにしている」との説明を聞き、他民族の受け人れにこれ程までに気を配って教育している姿には順か下がり国際化教育を考える上で大いに参考となった。

昭和63年度教員海外派遣 (長期派遣)

県教育庁県中教育事務所指導主事

佐久間俊彦

机間巡視のしゃすい机の配置で徹底した個別指導  (スルビ一校)

机間巡視のしゃすい机の配置で徹底した個別指導 (スルビ一校)

視覚障害児も専用テレビ等を活用して普通学級で楽しく学習  (スルビー校)

視覚障害児も専用テレビ等を活用して普通学級で楽しく学習 (スルビー校)

個別学習室で専任指導員より母国語を学ぶ子どもたち(アンティシュべリ校)

個別学習室で専任指導員より母国語を学ぶ子どもたち(アンティシュべリ校)


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