教育福島0140号(1989年(H01)07月)-051page

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世界の教育は、今。

海外教育事情の紹介

時代と生徒を見据えた教育イギリス

総合制中等学校での実践

ロンドンから北東八十三キロメートルの距離にあるルーカス校は、一九六三年に創立された総合制中等学校である。

現在、教員数五十九名、生徒数九百九十九名。十一歳から十六歳までの生徒が無試験で入学する。千八百人規模の計画で建設され、施設・設備面でゆとりがある。階段式ホール、温水プール、実習室、広大なグランド等、羨ましい限りだ。

生徒の日課は、八時五十分に登校して、三十五分の、授業を八時間受講する。三十五分の授業は、教室の移動時間が含まれており、実質は二十五分である。また、授業には日常的な宗教礼拝が法的に義務づけられていて、家庭での厳しい「躾」と相まって、生徒の精神教育に重要な役割を果たしているという。しかし、現在は信者の減少から、週一回の学年集会で、礼拝歌合唱、外部講師による講話などが行われている。

校長先生の案内で授業を参観した生徒の生育環境が多様で、かなりの学力差がみられるため、多くの授業形態がクループ学者で進められている。複数教師が各グループを巡り、生徒の能力に応じて助言を与え、自分で課題を設定して自学自習をしていく。あるクラスでは女子二人が廊下で協力学習をしており、それは二人が助け合えば十分学習成果が上がるとの担任の判断による。定着した学力が生きて働くような、社会に密着したユニークな指導で、大変参考になった。

参観授業内容は次の通り

○「職業」・・進路決定に備えて、広告の見方や内容の調べ方について演習

○「美術」・・レタリング・染色・陶器をローテーションで学習。教師は、パソコンを利用。

○「パソコン」・・プログラムコースの生徒が、体積を求めるプログラムを作成中。州の図書館には各機種のソフトが多数備えてあり、各教科で利用。

また、質疑の際には次のような説明がなされた。

○卒業生の進路は、就職六十パーセント、進学四十パーセント、就職者の大半は継続教育と農業実習コースに入る。進学者は職業教育大学の入学に備えて後期中等学校に進学する。

○校外で女子の喫煙がみられるが、家庭への連絡が主。職員に対する無礼や、生徒同士の喧嘩に対しては五日間の停学。退学処置もある。

教育改革の動き

イギリスでは二年前から試験制度が変わり、試験内容も暗記式から問題解決型へと移行しつつある。この変化にどう対応して学力向上を図るかが、各校の急務であるという。しかし、「教師側の意識変化が必要」という校長先生の強い言葉には、教育改革で揺れ動いているこの国の苦悩が感じられ、国情を越えて共感させられることが多かった。

県立猪苗代高等学校教諭新田銀一

数学のグループ学習

数学のグループ学習

なごやかに昼食のテープルを囲む生徒と職員

なごやかに昼食のテープルを囲む生徒と職員


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