教育福島0141号(1989年(H01)09月)-028page

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て、あれこれと発想することが多くなった。今は、集団の中での子ども一人一人の表情を見つめ、できるだけその子に合った対応を心がけている。

一年生を迎えると、すべての子どもが、楽しい気分で、心から喜んで登校してくれることを願い、何をしてひきつけようかと考える。今年は、自分の娘にせがまれて覚えたアンパンマン絵かき歌で、入学早々の子どもに迫ると、笑って近づいてきてくれた。

「先生、アンパンマン知ってたの」と、ニコニコ顔の子。

「ぼく、食パンマンもかけるよ」と、得意気に話す子。これに味をしめ、次に登場させたのが、キリンのキー坊と指人形。そして、勉強のテーマソングなる替え歌「たし算ダンスの歌」一太郎次郎社の『さんすうあそび』より)。これらを通して、物静かで、表情に余り変化のない子の顔に、少しでも笑みが浮かぶと嬉しくなる。また、一年生には、難しい言葉が通用しない。全員に同じ指示をしても、同じ行動を望むことは無理なので、一人一と対話しているつもりで話しかける。それでも、自分の事で精一杯の彼らは、それぞれの言葉で同じ質問をしてくる。不安なのだろう。しかし、私にしてみれば、『何度同じことを……。ああ、目がまわる』でも、そこをグッとこらえて、少々ひきつり気味でもあるが、笑顔を作る。子どもの動きに合わせて対応し萎縮させずにのびやかに生活させたいと思う。

今、以前に比して、家事や育児に追われ、一つの事にじっくりと取り組んで工夫を重ねたり、アイディアを生んだりする時間がなくなってきた。小手先の技術にとらわれがちでもある。しかし、我が子を育てるなかで思うこと、感じることも多く、これらを教育実践に生かしていきたいと思う。そして、伸びやかに、生き生きと活動する子どもを育てたいと願う私自身が、彼らに対して、明るく、おおらかに反応することが、まず大切なことだと思う、教師十年目のこのごろである。

(船引町立美山小学校教諭)

 

屯田兵とピアノ

 

屯田兵とピアノ

東城正幸

 

まだ三メートルだ」と自分に激をとばしてまたひと振り。まさに開墾である。

 

「グワーツ」と振り下ろす。「カキーン」と火花。直径三十センチもある石がゴロゴロと出てくる。後ろを振り返り、「今日はまだ三メートルだ」と自分に激をとばしてまたひと振り。まさに開墾である。

耶麻農高に赴任し、四年目を迎えた。この間、自分はいったい何をしただろう。教師としてまだまだひよっ子である私も、経験年数だけは増えていくようで、何とも心もとない。しかし、今、自分の原点だけは見いだせたような気がしている。それを例えていうならば、土方稼業とでも呼ぶべきだろうか。

赴任当時、憎らしいほど青々と茂っているグラウンドは、故郷阿武隈川の土手っ原のようで、「これじゃ危なくて授業どころではない」と思ったが、すぐに改修工事を頼めるはずもない。よし!と草けずりを始めたが、甘かった。芝と雑草の下は石だらけの岩盤である。やおら、鍬とフォーク状のレーキ、そしてグランドレーキの三種の神器を片手に、石と草との戦いが始まった。

空き時間も放課後もない。草を剥ぎ石を掘り起こししては均し、トラックを作る。「先生1、何一人で青春してんの一」二階の窓から冷やかしの声。「よし、次の休み時間までいっぱい進んでびっくりさせてやろう」力が入った。「ん1自己満足するでしょう」とある先生。「満足感もなくていい仕事ができるか」また力が入る。放課後の冷やかし軍団は、お手伝いグルーピーに変った。

一年目、五メートル幅の二百メートルトラックができ、二年目、そこに加えて直線で百メートルのコースがとれた。三年目、グレーダーをかけていただき、三百メートルトラックに。四年目、若干の砂が入ってようやくグランドらしい体裁が整った。偉そうなことを言っても通用しない彼らに、「やれば何とかなる」と伝えたかった。

さて、三年目の冬、こんな私にも垢抜けした場面が到来。屯田兵からピアニストヘの華麗なる変身である。本校では音楽担当が兼務教諭のため、卒業式の式歌にはカラオケを使用していた。しかし、職員間の炉辺談話からぜひ生演奏をということになったのである。冬休みのある日、エレクトーンが運び入まれると、「冗談だベェ」とは言っていられなくなった。若手教員の多い本校では、みんながマルチタレントである。さっそく猛レッスンが開始され、私は螢の光を伴奏することになった。生来の凝り性から、難しいアレンジに挑戦。式は感動のうちに終り、まさに手作りの卒業式となった。生涯忘れられないだろう。

今、職員室の窓から見えるグランドは、再び青々としている。体育館には

 

 

 


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