教育福島0141号(1989年(H01)09月)-051page

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世界の教育は、今。

海外教育事情の紹介

個性を重視した教育制度

カナダ

私たちが訪問したのは、モントリオールの東北東約百五キロの地点にあるケベック州に属する農村部市で、フランス風の香り豊かな町であった。初等教育は、六歳から六年間、中等教育は、十二歳から五年間で、いずれも年間授業日数が百八十日であると聞いた。

日本と異なるところは、「生徒は絶えず進歩するもの」という考えから、科目単位で進級できる制度も取り入れていることである。高等教育や成人教育にも多種多様なコースが準備されており、個性を生かすことに関して細かな配慮がなされていると感じられた。

教育委員会は、「1)たくさんの笑顔 2)ダイナミックな人間形成 3)しつけ 4)博愛の精神 5)競争より協力を」という五つの重点教育目標を掲げており、広大な大地に培われた心の余裕のようなものを感じた。

ふれあいのある初等教育

最初の訪問校サン・マジョリック小学校は中規模だけに子どもの日常生活のしつけがよくゆきとどいていた。

さまざまな年齢の子どもが父母の協力のもとに個別学習をしている授業風景は、非常に印象的であった。また、教師と児童が一堂に会してにぎやかに食べる学校給食は、私たちもいただいたパティ・レノアの味とともに忘れがたい思い出となった。昼食後、多くの子どもたちは、私たちにサインをねだって集まったのであるが、子どもたちの輪の中で、自らサイン用紙を配布する校長先生の姿に胸が熱くなるような感銘を受けた。

多様な課程を持つ中等教育

次の訪問校は、マリエ・リバール中等学校であった。この学校は、カレッジへの進学を目指す普通コースと技術者の養成を主とする専門コースの二つの課程から成り、後者の場合、美容、理容、秘書、簿記、ホテルなど職業生活に直接役立つさまざまなコースが設けられている。教育委員会の歓迎レセプションは、この学校の実習室で行われたが、出された料理のすばらしさはもちろん、ボーイとして世話をしてくれた生徒たちのマナーの立派さには自を見張らせるものがあった。

ユニークな成人教育センター

次の日は、成人教育センターを訪れた。このセンターは、何らかの理由で中等教育をドロップアウトした者を主たる対象とした教育機関である。十六歳以上であり、中等教育を修了していない者は誰でも入校でき、しかも入校の時期は自由とのことであった。各自の適性や希望が重視され、一人一人のデータがコンピュータに入力されていて、カリキュラムはそれによって管理されていると聞いた。一か月の準備期間を終ったのちに正式の教育が始まるとのことで、人生の再出発のために熱心に努力する若者たちの姿を見て、彼らの明るい前途を祈らずにはいられなかった。

昭和六十三年度教育海外派遣(短期)福島県第七十一団

富岡町立富岡第一中学校教諭 小松イク

マリエ・リバール中等学校普通科コースの授業風景

マリエ・リバール中等学校普通科コースの授業風景

サン・マジョリック小学校のグループ学習風景

サン・マジョリック小学校のグループ学習風景

子どもたちに折鶴をせがまれて(サン・マジョリック小学校)

子どもたちに折鶴をせがまれて(サン・マジョリック小学校)


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