教育福島0142号(1989年(H01)10月)-020page
含め十分検討していきたいと考えております。
おわりに
以上、健康セミナーの内容等について紹介しました。
今後ますます複雑になっていく現代社会の中で、いかに健康を保持増進していくかということは、すべての人にとって大きな問題になります。次に掲載しました白石先生のご講演からも明らかなように、−これも結局は自分自身の努力にかかるもので、自分の健康は自分で守るという生き方が大変重要なことであると言えます。
この点を十分に踏まえたうえで、教職員の皆さんが普段の暮らしにおいて健康的なライフスタイルを築くために.この健康セミナーをはじめとする様々の事業が少しでも役に立つことができるように努力して参りたいと考えております。
健康セミナー講演(要旨)
心と体の健康を求めて
福島大学教育学部助教授 白石 豊先生
心と体の健康を求めてというテーマで、お話しを進めてまいりたいと思っております。「健康とは、身体的、精神的、かつ社会的に完全に良好な状態にあることであって、ただ単に、病気でないとか虚弱でないとかいうことではない。」というWHOの健康の定義を待つまでもなく、現代社会に生きる私たちは、単に病気ではないというだけではなくて、もっと積極的に社会に働きかけていけるような、たくましい心と身体を持つことが望まれております。
しかしながら、こうした願いとは裏腹に、国民の医療費がうなぎ登りに増加し続けているのが、現状であります。
こうした健康の問題につきましては、それぞれ専門のお医者様がお話しになることではございますが、今回私は、私が二十年以上にわたって、自分でやりもし、また指導もしてまいりましたスポーツの世界で、いろいろ感じたり考えたりしましたことを手掛りにいたしまして、この心と身体の健康の問題についてお話ししてまいりたいと思っております。
さて、第二次世界大戦後、社会が落ち着きを取り戻し、人々の生活が次第に豊かになりました頃から、欧米諸国を筆頭に、わが国におきましても、死因となります病気の内容が、大きく変わってまいりましたことは、皆様もご承知のことと思います。つまり一つには癌による死亡の増大と、もう一つは心臓・循環器系統の障害による死亡の著しい増加であります。また本来、元気で活発であるはずの子どもたちの心や身体のゆがみが指摘されてから、すでに十年を経過しようとしております。これらの現象の原因となっておりますのは、栄養過多、そして運動不足、さらには不規則な生活のリズム、また複雑化の一途をたどる社会システムからくるストレスの増大などであります。
こうしたいわゆる文明病を防止するために、たとえば、西ドイツでは一九六〇年代初頭に、国民がいつでもどこでも手軽にスポーツが楽しめるような施設や組織作りに着手いたしました。これが、いわゆるゴールデンプランの発足であります。また、アメリカにおけるジョギングやエアロビクス、あるいは昨年あたりから大流行しておりますウォーキングエクササイズなどの一連の流れも、現代人の抱える運動不足からくるさまざまな病気を、少しでも予防しようというところがらきております。
はじめにWHOの健康についての定義を申し上げましたが、皆さんは、健康ということをいったいどのようにお考えになっていらっしゃいますでしょうか。
私も小さい頃から身体を動かすのが好きで、たいていの日本人の子どもたちがそうでありますように、学校から帰りますと、しょっちゅう野球ばかりをしているような毎日を過しておりました。一九六四年に開催されました東京オリンピックを境に、私は体操競技の世界に入っていった訳でございます。
まあ入ったと申しましても、当時私は十歳でございましたし、まわりにきちんと指導をして下さるような方もいらっしゃいませんでしたので、家のマットレスを内緒で引っ張りだしては、ドタンバタンとやっていたわけでございます。
スポーツと申しますのは、どのスポーツでも同じだと思いますが、とにかくいったんその世界の面白さが分かりかけてきますと、もうやめられなくなってしまうわけであります。
普通は、何かのためにスポーツをやるなどというのではなくて、ただそのスポーツをやること自体が楽しくて楽しくて仕方がないわけです。ですから、このスポーツをやると、クラスのヒーローになれるからやるんだとか、このスポーツをやると健康になるんだとかいうのは、たしかにスポーツをやることによって後からついてくることではあるのですけれども、最初からそのことばかりを目的にして、スポーツをやるというのでは、ちょっと息がつまってしまうような気が、私などはいたします。この、ただやるというのがいいのではないでしょうか。禅の世界では「只管打座と申しまして、悟りを得るために、ただ座るわけでありますけれども、この「只管」というのをひたす