教育福島0142号(1989年(H01)10月)-051page

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世界の教育は、今。

海外教育事情の紹介

心豊かな教育チェコスロバキア

訪問都市チエスケビディョビツェは、首都プラハの南西百五十キロメートルにあり、そこで六つの学校を視察した。

ルボカ小学校(一年〜四年)は、中学校(五年〜八年)と併設である。一年生の算数の授業を参観した。チェコでは平均的な二十名ほどのクラスで、うらやましい。児童が立って答えたり、黒板に出て操作したりしていた。教科書も練習用のノートも集合の考え方で一貫していた。子どもたちは、緊張しているふうもなく自然に私たちに接する。入学後三か月(九月入学)の一年生が、私語もなく整然と熱心に授業を受けている姿に驚いた。そういえば、前日のマテシカ幼稚園訪問の時も、午睡の時間であったのだが、かわいい瞳をパッチリ開けて、カタリとも音を立てなかった。あの静寂もこれにつながるのだろうか。理由の質問に、家庭でしつけられてくること(母親は子どもか三歳になるまで職場に復帰しない)、少人数であること、道徳教育が大切にされていることなどが答えとして返ってきた。

小・中学校の授業は午前中で終わる。午後は、民族芸術学校に行ったりスポーツクラブなどで過ごす。民族芸術学校には、音楽・舞踊・美術・劇の部門があり、専門教育が行われているそうだ。約十パーセントの児童が入っている。幼稚園や小・中学校を回って能力のありそうな子どもを見つけ、親と相談して入学させるとのことである。幼いころから能力開発が徹底している。

チェスコクルムロボスコフ普通高校の生徒たちはさわやかだった。裏山で干し草を集めている作業も、自主的な労働だそうだ。参観後の話し合いには、三名の生徒も加わった。日本の高校生についての質問も多く、落ち着いた話しぶりは見事だった。接待のマナーも洗練されていて、心の教育が定着していることをうかがわせた。

企業内学校は、小・中学校八年間の後の二年間の義務教育期間(高校に行かない生徒)を受け持つ。仕事のための実習が中心である。希望者が少なく、学習意欲に欠けるのが問題であるとの説明。チェコの肉体労働者の賃金は、医者や教師の収入よりはるかに高いので矛盾が生じているとのことであった。

街にはネオンもなく、豪華なショウウィンドーもない。ほとんどがポンコツ車である。たが、学校にはもちろん街かどにゴミはない。十四世紀、中欧の中心地として栄えた古都プラハの街は、ロマネスク・ゴシック・バロックの建築が混在して調和があり、すり減った石畳に歴史がずっしりと重い。その中で、のびのびと育つ子どもたちの姿に、付け焼き刃ではない文化の香りが漂う。人間にとって豊かさとは何か。

しかし、そのチェコもまた、働く意欲の問題で苦悩している。

昭和六十三年度教員海外派遣(長期派遣)会津若松市立双潟小学校 教頭 佐藤信高

ルボカ小学校での1年生の算数の授業

ルボカ小学校での1年生の算数の授業

農業高校での実習

農業高校での実習

ルボカ小学校での高学年の授業

ルボカ小学校での高学年の授業


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