教育福島0143号(1989年(H01)11月)-048page

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図書館コーナー

 

「読書離れ」と県内の読書実態

 

県立図書館

 

「読書離れ」という言葉が使われ始めてから、かなりの月日が経ちます。

しかしながら現在、この「読書離れ」という傾向はどうなっているのでしょうか。まだ進行中なのでしょうか。それとも終わりつつある現象なのでしょうか。

「読書離れ」という言葉は、テレビに代表されるような、映像文化の出現とともに現れ、それらが普及していくに従い、一般的な言葉として使われ始めました。

それゆえ、以前にも増して情報が氾濫している今日、その存在がますます不安になりそうな読書ですが、実際にはどうなのでしょうか。この辺を県内の図書館・公民館の利用状況から考えてみたいと思います。

県立図書館では、毎年「福島県公共

図書館・公民館図書室実態調査報告書」を作成しています。県内の読書施設の整備状況と、その利用状況について調査をしたもので、大枠ながら読書の動向について、うかがい知れるものとなっています。

この報告書の中から、必要な部分を年度別にまとめたのが左の表です。

統計は、昭和五十四年度からの最近十年間のもので、平均した活動が行われているという意味から、図書館の部分をまとめました。

この表からわかるように、全体の貸出冊数や登録者数、蔵書冊数は着実な伸びをみせていますし、当初十七館だった図書館も二十一館と、わずかながらその数も増えています。また、統計には入っていませんが、今年度は矢吹町で図書館がオープンしましたし、来年度は三春町でオープンする予定です。このように、読書環境の整備が一歩一歩進められている現状や、その利用状況を見てますと、「読書離れ」という言葉が、まるで嘘のような感じさえしますし、あるいはもう死語になってしまったという感じさえしますが、いったい「読書離れ」とは何なのでしょうか。

子どもにしろ、大人にしろ、根本的に本が嫌いで読まないという人は、ほとんどいないのではないかと思います。子どもなら塾や漫画、ファミコン、大人ならそれぞれに持っている趣味などに興味と時間を取られ、余暇の中で読書が占める割合が減ったために、「読書離れ」などという言葉でそれを表現したのではないかと思います。

つまり、本質的な部分での活字からの敬遠ではなく、様々な要因がもたらした、表面的な事象ではなかったかと思えるのです。

冒頭に述べましたように、映像文化の台頭により、人々は情報収集の場を、迅速で容易なそれらに見いだすようになりました。しかし、情報が氾濫し、受け手が選択しなければならなくなった今日、活字と映像のバランスをとることが、あたりまえのこととして捉えられ、生活の上で必要不可欠なものとなってきました。

このことはまた、時間を合理的に使い始めたとも言えますし、その中で読書という活字文化を大事にし始めたとも言えるのではないでしょうか。

本を読むということは、楽しいことです。その中から、感動や知る喜びなどを得ることができるのですから。上記の表でもわかるように、県内でもそうした読書の楽しみを分かち合う人々がだんだん増えてきました。図書館だけではなく、学校・家庭・職場とその輪を広げていくことが大切だと言えます。

 

県内図書館の利用状況

 

 

 

 


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