教育福島0143号(1989年(H01)11月)-051page

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世界の教育は、今。

海外教育事情の紹介

社会が求める教育を地道に推進

−ルーマニア−

ルーマニアを訪れたのは、十一月の中旬であったが、首都、ブカレストは一面雪に覆われていた。

私たちが訪問した地域は、ブカレストより北西へ約百キロメートル離れたシビウ州の都市メディアシである。人口は約六万八千人で、ガラス工業の発達している町である。町全体は暗く煤けた感じで、日本の戦後を思い出させるようなところであった。

ルーマニアの学校教育は、一九七八年に制定された新教育法に基づき、経済、社会、文化的活動のすべてにわたる専門家を養成することを目的とし、職業、文化及びすべての人間にかかわる知識のレベルアップを目指している。特徴としては、社会主義イデオロギーの教育の実施や産学協同の方針に基づいて、生産のための教育に力を入れているため、高校の七割は工業高校である。また、少数派民族が多いため、言語教育にも力を入れている。

就学前教育は、三歳から五歳までの幼児を対象とし、最初の段階の集団教育で、幼稚園で行う。1)一日四時間〜六時間の保育教育を行う普通プログラム。2)一日十時間〜十一時間の保育教育を行う長時間保育プログラム。3)一週間のうち、限られた日だけ通園する幼児のための週プログラムの三つがある。どこの幼稚園にも医師と看護婦がいて、園児は毎日通園するとすぐに健康診断を受けて生活している。

初等教育は、六歳から九歳までの四年間、小学校で行われる。教科内容は基礎・基本を重視しているため、一・二年生は読み、書き、算数を中心に、三・四年生になると、社会と理科が加えられ、体育、音楽、図工は一年生から通して教えられている。授業は、午前八時から十二時までの四時間で、午後は学習塾や指人形クラブ、ダンスクラブなどに通っている。成績評価は、十段階のうち五以上取得できて、はじめて進級できる仕組みである。

前期中等教育は、十歳から十三歳までで、中学校で行われる。五〜八年生の授業は午後一時から行われ、五・六年生は六時まで、七・八年生は七時までの授業である。教科は日本とほぼ高じであるが、外国語は英語と仏語の二教科が必修となっている。子どもたちの使っている教科書はボロボロで、二人に一冊しかない有様である。ノートはザラ紙製だったが、丁寧に書かれていたのには驚いた。また、使われていた教材も、日本ではふた昔も前に使っていたようなものばかりだった。

今回の視察を通して、教材教具の豊かさに慣れっこになっている我々の生活を、ふと思い起こし、自戒の念にかられたものである。

視察先々で出会ったルーマニアの子どもたちが、物質的には豊かではない環境で学びながらも、どの子も健康そうな様子と子どもらしい人なつっこい表情で我々に接してくれたことが、今でも強い印象として残っている。

昭和六十三年度教員海外派遣(長期派遣)

相馬市立向陽中学校教諭 渡部長男

十七番幼稚園の授業風景

十七番幼稚園の授業風景

小学生の理科のグループ学習(六番小中学校)

小学生の理科のグループ学習(六番小中学校)

ハンドボールに取り組む生徒たち(六番小中学校)

ハンドボールに取り組む生徒たち(六番小中学校)


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