教育福島0145号(1990年(H02)02月)-007page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

3)中学校時代は三十二パーセントで、最高の率である。もちろん日制の中学は五年制で現行の高校生を含んでいるので、この時期に約三割が特性を自覚して将来の進路を決定していたということは大いに注目すべきことである。

4)高校は、理科と文科という大まかな分類であったが、この時代の修学によって二十四・七パーセントという中学時代に次ぐ高率を示している。文科・理科の中のどの分野に進むべきかを決定したものと考えられる。

5)大学時代に二十二パーセントというは、その専攻分野がさらに細分化され、あるいは全く新しい分野に進んだ方もある。

6)大学卒業後にも十一パーセントの率を示していることは、大学卒業までの長い修学を経て、始めて自己の真の特性を自覚し、全く新しい分野に進んだ方が決して少なくないという驚くべきことを物語っている。

以上の実態調査から、中学時代からの特性開発の教育指導は有益であるという確信を持つことができたし、また、人間の特性自覚は、人によって早晩があるということを知ることができた。

 

教育の目標は、豊かな人間の形成を基盤として個性を開発することがその根幹として掲げられる。ところがその特性の自覚は、本人の自発的なものか、教師や環境からの誘発的なものかが大問題であるが、乏しい経験から言えば、誘発的のものが少なくないように見受けられる(ここに学校教育の重大意義がある。教師の指導力が生徒の特性を自覚させ、そして発展させていくという厳然たる事実を再確認しなければならない。と同時に、特性の自覚は人によって早晩のあることも重視して、性急に功を急いではならない。長い修学の結果、自己の特性の真実を自覚する、大器晩成の人材の存することも忘れてはならないであろう。

 

提言

 

東京成徳短期大学において講義する筆者

東京成徳短期大学において講義する筆者

 

 

 


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は情報提供者及び福島県教育委員会に帰属します。