教育福島0147号(1990年(H02)06月)-039page
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で演じられたドラマを手がかりに、それを発展させたドラマを演じる状況
○二人ずつ組みになり、ゲーム的要素を取り入れながら、「自由に遊びの相談をする」という状況
ここでは、紙面の関係上A児の行動の様子と私たちのかかわり方、児童の変容について、若干の考察を加えつつ述べるに止めたい。
A児は、創造的に生きようとするいわば、革生的な欲求を、対人関係のまずさのために満たすことができず、活動が十分に展開しないまま経過する様子が見られ、それにつれて緊張も増幅され、それが限界を超えた時、粗大な調整による荒々しい行動となって現れるという場面が何度か見られた。自分はやりたいんだが、相手がいやだから、または、相手との間に摩擦や衝突が起こるのがいやだからといった心理的な方向衝突が起こり、「カーテンにかくれる」「ノートに落書きを始める」「つめをかむ」「落ち着きがなくなる」などニュートラルな形(緩衝行動体制)で行動調整のバランスをとっている様子も見られた。日常生活の中で、A児は、このような状態を繰り返す中から緊張が積み重なり、それが行動体制間の調整過程自体に大きな動揺を引き起こしていることが推測された。しかし、そうした調整によっては持ちこたえられなくなった時、けんかや情動的爆発といった形で現れる行動(救急行動体制の発動)は、その時点における微調整能力の限界を示すものであるが、同時に、それをまた心理的動揺の修復を図り、新たな秩序構成による革生的対処の可能性をはらんだものとも考えられる。
私たちは、指導実践の状況の中で見られたA児のこのような障害状況に対して、その原因を探りながら、決して無理することなく、条件を少し変えてやる中で、A児が本来やりたい活動が十分に展開するような体験をさせるようにした。そして、そのような中から様々な気付きを促すよう援助していった。
このような援助を含めた実践過程を通して、自己の生活活動を支え、規制するものの見方、考え方の枠組みを改める作業が主体的に行われ、対人関係の様相に変化のきざしが現れてきたことを、A児の行動からうかがうことができた。
資料2 指導実施計画案(第5回目)
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五 おわりに
子どもたちの生活は、常に「大きく、高く」を求めて展開しようとしている。私たちは、「どんな行動でも、その子にとっては意味のある行動であり、その行動は生活をより拡大することにかかわっている」という視点から子どもの心をくみ取ることができた時に、初めて指導の手がかりを得ることができることを、この実践を通して強く感じた。
(注)行動体制 現に起こっている行動は、それが起こるに至る生体内外の条件によって調整される関係にあることを意味する用語。
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