教育福島0149号(1990年(H02)09月)-008page

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特集1

 

一人一人を生かす進路指導の展開

−中学校−

 

義務教育課

 

進路指導の望ましい在り方を求めて

 

今回の教育課程の基準の改訂で進路指導が一層重視された。これは最近の諸審議会等で指摘されてきた進路指導の課題を踏まえてのものである。

新中学校学習指導要領の総則において「生徒が自らの生き方を考え主体的に進路を選択することができるよう学校の教育活動全体を通じ、計画的、組織的な進路指導を行うこと」と示されている。また、より効果的な進路指導を推進するために、特別活動の中に進路指導を位置付け、これを中核に学校教育の全教育活動を通して行われる進路指導を補充、深化、統合するよう求めている。

しかし、中学校における進路指導に関して、現在次のような問題点、課題が指摘されている。

ア、高校進学率が高まるにつれて、進学指導中心になり、一人一人の生徒の優れた一面を見失いがちである。

イ、生徒の進路選択における主体性の欠如や、高校生活及び将来の職業を見通した進路選択ができない。

ウ、単なる就職紹介や進学指導等を集中的に行う傾向がある。

エ、中学校と高等学校及び、学校と家庭、進路指導部と各学年の連携の強化と、効果的な情報収集の在り方を工夫する必要がある。

オ、生徒一人一人の個性、資質を重視した指導の工夫が望まれる。

従って、生徒の将来における生き方の指導や人生観、職業観などに立脚した自己実現のための進路選択、決定への援助指導を一層充実する必要がある。

こうした点を踏まえ、県教育委員会では、中学校における進路指導の重点として新学習指導要領の趣旨を基に生徒自らの生き方を考え、主体的に進路を選択することができるよう、学校教育全体を通じ、計画的、組織的な指導を行うため次の三項目を設定している。

一、進路指導についての共通理解を深め、指導体制を確立する。

二、地域や学校及び生徒の実態に即して指導計画を改善し、指導の充実を図る。

三、家庭や地域社会、関係諸機関との連携を一層強化する。

具体的な働きかけとしては、昭和六十一年七月十一日付で「適性な進路指導の推進について」の通知を行う一方例年「教育福島」九月号に「進路指導の充実」を掲載するなど、資料や情報の提供に努めている。中・高一貫した進路指導の充実を期するため、各管内ごとに進路指導講座を開設する等により、各中学校に対して進路指導について深い理解と一層の努力を要望している。

本来、進路指導は生徒一人一人が自分の将来の生き方への関心を深め、自分の将来の展望を持ち、進路の選択、計画を行い、社会的、職業的自己実現を達成していくのに必要な自己指導力を育てるための組織的、継続的な指導、援助である。しかし、今後更に大切な点は生涯学習の立場から、当面の自己の諸問題を解決し、自己を正しく理解することにより、将来における自己の生かし方の基礎を身に付け、自らの力で進路を選択することができる能力の育成を図ることである。

以下、中学校における進路指導の望ましい在り方を求めて、自校の問題点や課題解決のため全校挙げて研究に取り組んでいる中学校の実践例を紹介する。

いわき市立平第二中学校は、昭和六十三年度、平成元年度の二か年にわたり県教育委員会の研究指定を受け、進路指導の改善・充実を目指し、大きな成果をあげた。

当夜では、学校の教育活動全体を通して、組織的・計画的に進路指導を推進するとともに、生徒一人一人に目を向け、特に学級指導において生徒の自己理解を深めさせ、発達段階に応じた望ましい進路指導の在り方を追求している。なお、研究の成果は平成元年十一月二日に発表された。

各中学校においては、進路指導の今日的課題を正しく理解し、平第二中学校の研究の成果を参考にしながら自校の進路指導の在り方を見直し、その改善・充実に一層の努力をされるよう期待するものである。

 

 

 


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