教育福島0149号(1990年(H02)09月)-022page
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特集3
社会参加・自立を目指す養護教育の推進
養護教育課
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一、はじめに
昭和六十二年十二月、「盲学校、聾学校及び養護学校の教育課程の基準の改善について」の文部大臣の諮問文においては、「可能な限り社会自立の達成を図る」となっていたものが、翌六十三年十二月の答申では、すべて「社会参加・自立」という文言に変えられています。このことからは児童生徒の障害が重度・重複化、多様化したことに対する配慮がうかがい知れます。
折しも、国際障害者年にちなむ「障害者の十年」の中間年に当たって策定された「後期重点施策」の具体的な提案の一つとして、「長寿・福祉社会を実現するための施策の基本的考え方と目標について」(厚生省・労働省、昭和六十三年)が公表され、その中で「リハビリテーション及びノーマライゼーションを基本理念とし…心身に障害のある者が住みなれた地域社会の中で自立し、社会参加できるようにする」方向づけが示されています。
今後、養護教育の推進に当たってはこうした社会的動向も見据える必要があり、特殊教育諸学校や特殊学級においては、通常の学校(小・中学校等)・学級との交流をより一層充実させることが緊要です。
二、心身障害児の願い
学校教育が、障害の重い児童生徒を対象とするようになったこともあって、卒業時の就職率は、年々低下してきています。本県の養護学校中学部卒業者の就職率は、四パーセントそこそこであり、養護学校(精神薄弱)高等部卒業者の就職率でさえ四十パーセントという現状です。肢体不自由、病弱の各養護学校高等部卒業者の就職率は、更に低く、二十数パーセントにとどまっています。
これは、生産部門の空洞化現象や、パート就労、ラインの機械化など雇用情勢が変化する中では、身体障害者雇用促進法が改正されても、まだまだ困難な状況にあることを示しています。
心身に障害のない者にとって、働きながら人と交わる生活の大切さについて、普段、ほとんど意識することはありません。ちょっとした病気で入院したりしたとき、毎日出かけて行って、働きながら人と交わる生活のできるありがたみがよくわかるものです。
次に、障害者の書いた詩を紹介します。
仕事
宮本正明
おれが 箱のふたを 重ねるとき/おれが 箱のふたを とろうとするとき/そう 思っただけで/あれの手は もうふるえてくる/ふるわせないで おこうと思うと/なお ふるえてくる/そして 体中が かたくなる/そして ひっくりかえってしまう/石ころのように
たった 一つの箱を とろうとしただけなのに/ぼくの体は いうことをきかない/腹が立って/なさけなくて/煮えくりかえってくる/脂汗が、たらたらとでてくる/悲しくなって/やめたくなる/でも おれはもう一度すわりなおす/そして また 箱に手をのばす/そして また/おれの手は ふるえだす
何度めかに/やっと おれの手は 箱にとどく/うれしい/やっと 手がとどいた/それはもう/おれにとったら/地球をひっくりかえびほどの仕事なんだ
それが/おれの労働なんだ
(茂木俊彦著「障害児と教育」岩波書店 一九九〇)
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