教育福島0149号(1990年(H02)09月)-037page

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生徒の実態に応じた個別指導や、放課後等を利用した課題による添削指導や補充指導を行っています。また薄記検定(三級)、家庭科の技術検定(三・四級)、英語検定(三級)等の資格取得に努めさせ、職業意識の高揚を図り、将来の進路に役立たせています。

 

五、盲学校における教育

県立盲学校

 

(一) 盲学校の概要

盲学校では、全く見えない児童生徒と、日常生活では一般の子どもとあまり変らない視力の弱い児童生徒が一緒に学習しています。

視力が〇・三未満又は、視力以外の視機能障害があって、点字による教育を必要とする児童生徒は、盲学校で学習するよう定められています。(学校教育法施行令二十二条の二)

盲学校は、県内に唯だ一つであるため、学校敷地内に「寄宿舎」と、盲児施設「福島光風学園」があり、児童生徒の多くは、そこから通学しています。学校の近くに住んでいる児童生徒は、それぞれの家庭から通学しています。

盲学校には、小学部、中学部、高等部があり、小学校、中学校、高等学校に準ずる教育を原則として、視覚障害の状態に応じ、点字による学習をしたり、拡大読書機器等を使った学習をしています。

高等部には、普通科の外にあん摩マッサージ指圧師の免許を取得するための専門教育を行う保健理療科と、更にはり師、きゅう師の免許を取得するための専門教育を行う専攻科理療科があります。

 

(二) 社会参加・自立を目指した指導

人は、視覚から約八十五パーセントの情報を得るといいます。その視覚に障害があると、児童生徒は、周囲の空間や、時間の認知ができにくい状態となります。また、事物や事象について、実際にはよく知らないのに、ことばだけが先行してしまい、ことばの表す本来の意味が理解されていないという状況に陥りやすくなります。(唯言語主義)

健常児が、何か向こうに(距離を隔てて)見えるもので興味を引くものを発見すると、その目標に向かって、移動し、その欲求を満足させ自ら学習していくのに対して、全盲児は、手を動かして、たまたま触れたものをつかみ調べてみるという行動をとります。これは、健常児のような初めから目的をもった行動とは違うもので、受け身的な行動ともいえます。そこで、全盲児(弱視児も含めて)に対しては次のようなことに特に留意する必要があります。

○自ら目的意識をもって自ら移動しその目的を達成するための手段や方法について、自らが考え実行できる力をつけること

○手にとった物の性状や、それが置かれている空間、他の物との関係などを、多くの部分的な情報としてとらえ、全体としてまとめ総合的に把握する力を育てること

○自力で目的地まで移動するためには、周囲の様々な環境(物的環境、人的環境、空気の流れや臭い、温度、湿度、音などを含む)を「健常者の見る状況」と同様に認知するのではなく、現におかれている状況において、どう行動するかという視点から把握する力をつけること。

これらのことを、踏まえた上で、体験的な学習を重視し、唯言語主義をできるだけ少なくするよう配慮しつつ、学校生活のあらゆる場で指導に当たることが、視覚障害児の社会参加・自立を目指す指導の基礎・基本であるとして指導に当たっています。

 

(三) 専攻科理療科における指導

この課程は、高等部(高等学校)卒業以上の視覚障害者の社会自立を目指す職業教育の課程です。

この課程の教育目標は、はり、きゅう、あん摩、マッサージ・指圧に関する基礎的・基本的な知識と技術を習得させ、国民の健康保持増進及び疾病の治療に寄与する能力と態度を育てることです。

三年課程で、一、二学年で教養科目(心理学、社会福祉学他)、基礎医学(解剖学、生理学、衛生学他)と基本実技、三学年で臨床医学(現代医学、東洋医学、リハビリーテーション医学)、臨床実習(外来治療)、病院研修等を学習します。修了生には、はり師、きゅう師、あん摩・マッサージ・指圧師試験の受験資格が付与されます。

これまでの卒業者は、病院及び治療院勤務、自営(治療院)等で活躍し、地域の中で、社会自立の道を歩んでいます。

 

医学的な基礎知識の学習(専攻科理療科)

 

医学的な基礎知識の学習(専攻科理療科)

 

 

 


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