教育福島0154号(1991年(H03)04月)-006page

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提言

情緒の発達と健康人

 

郡山女子大学教授

 

郡山女子大学教授

森一

 

私の書斎の机にはいつもきれいな花が飾ってある。娘がこまめに花を挿しかえてくれる。医大、そして今の女子大の私の研究室にも花の姿が目に入る。小学生の頃、母が「学校へ持っておいで」と庭の草花を切ってくれた。その花は担任の先生に上げるか、自分で教卓の花瓶に飾るかした。幼い頃から「なんでこんなに花は美しく咲くんだろう」と思っていたが、ある本に「それは、花は自分が美しいのを知らないからだ」と書いてある一節が、たいへん私の心をとらえた。

小学五年生の夏休みの朝、父は用事で隣りの岩手県の福岡町(現在は二戸市。青森県と山道でつながる)へ出かけるとのことで、喜んで同行した。用事が済んで、さらに町から離れた水力発電所を見物して帰路についた。重い足をひきずって峠から町の灯が見えた時は既に星空。疲れてしゃがんだ私に父は「よいよい。家からフトンを持ってくる。ここで待っていろ」。気をとりなおして我が家に辿りついた。この時に歩いた往復五○kmが私の最長歩行記録となった。

昭和二十九年四月、医大の附属中央研究所に助手として赴任。所長(初代・大里俊吾学長)は五分間でも絵を描く(春郊と称した)主義で、時には郊外散策、時には学会の後で、神社仏閣を訪ね、そのお供をした。そのうちに気づいたことがある。山

 

 

 


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