教育福島0154号(1991年(H03)04月)-007page

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筆者のコレクションが掲載された新聞記事とコレクションのポスター

 

筆者のコレクションが掲載された新聞記事とコレクションのポスター

 

中の半ば朽ちた稲荷(イナリ)さんにでも、必ずお賽銭を上げて拝むことだった。結局、弟子もそれを見習うようになった。先生の信仰心はどうも親譲りのものらしい。

今から十五年程も前になろうか。ボウイスカウト(福島六十七団・松木町カソリック教会)の二十数名が志津川海岸の松林で、十日間の夏の合宿を行った。冒険であったが、コメと味噌(みそ)だけを持参、他はすべて現場で自給・工夫することにした。カブスカウト(小学三-五年)を含む中学生である。夢の中で母の名を呼び、飯を炊けず半生(なま)のコメを噛った隊、野菜としてドクダミのおひたしをつくり、味がないとつぶやいた子。だが全員耐え抜いた。帰路の列車は仙台七夕祭の見物客でいっぱい。一つ空いた席を勧められたスカウトが、「スカウトだから立ちます」と言って女性を座らせ、重いリュックを背に立ち眠りをした。

昔を振り返り、自慢にならない自信があることと言えば、食べものや物不足、少々の困難に悲鳴をあげない、少し親切にされると感謝する、といったところか。最近は、忍耐も感謝も創意工夫も必要なくなった。「過密化と物質的理想環境の中で、生物はどうなるか」という研究(アメリカ)では、肉体的に健康で、まるまると太り、ケンカもせず、個室に閉じこもり他に無関心である。しつけが悪い、交配もいやがることから、遂には居住空間にたっぷりゆとりを残して、全滅した(ネズミの実験、わが国での追試も同様)。幼児は情緒が安定した時に、最も良くものを覚え、発達することがわかっている。情緒の発達に最大の影響を与えるのは母親であり、家庭であり、身近な自然である。人間関係は家庭から始まり社会へ世界へと進んでいく。「大草原の小さな家」が見事にこれを見せている。幼児期からの情緒安定、自然の美しさや素晴らしさを感じとる心身の発達があってこその実現である。自分の心と体がどんな状態にあるか、そしてどうすればもっと良い状態になれるか、それこそ自己実現の第一歩で、それを実行しようとする人こそ健康人と私は定義する。

 

【筆者紹介】

森一・もりはじめ

大正十三年 青森県三戸郡田子町に生まれる

昭和二十七年 東北大学理学部生物学科卒業

〃 〃 宮城県仙台第一高等学校教諭

〃 二十九年 福島県立医科大学附属中央研究所助手

〃 三十年 福島県立医科大学進学過程講師(附属中央研究所兼任)

〃 三十三年 福島県立医科大学助教授(生物学担当)

〃 三十六年 医学博士

〃 三十九年 福島県立医科大学教授(生物学担当)

平成元年 福島県立医科大学退職

〃 〃 郡山女子大学家政学部教授(生物学担当)

 

日本動物学会、日本民族衛生学会、日本癌学会、日本遺伝学会、日本電子顕微鏡学会、日本細胞生物学会、大気汚染研究全国協議会、熱帯医学会で、学会発表・論文が多数ある。また、国立科学博物館(東京)から多くの論文が出版された。現在は、日本比較文化学会、日本放送芸術学会から多数の論文が発表されている。

この度、高齢者生活学会副会長に就任した。職業別に見た寿命の研究でもって、テレビ・新聞・雑誌で数々報道されている。昭和四十一年九月、東ドイツのワイマールにおける古生物学会から招待され、日本人として初めて東ベルリンに入国した。

 

 

 


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