教育福島0155号(1991年(H03)06月)-048page
教育ひと口メモ
応急処置研修事業
保健体育課
新学習指導要領が実施される平成六年度から、高校の科目「保健」に心肺蘇生法を含めた応急処置の実践授業が取り入れられます。そこで、応急処置のうち特に、心肺蘇生法の技術を身につけることの必要性及び高校の授業に位置付けられた背景等について述べてみます。
一、心肺蘇生法の必要性
人の呼吸や心臓が停止すると、三分から四分後には、脳細胞の破壊が始まり、停止時間が長引くにつれて、回復不能のダメージをうけます。そのような時に、生命を救うために何よりも優先して行わなければならない手当てのことを救命処置といい、心肺蘇生法が重要となってきます。
心肺蘇生法とは、止まった心臓や呼吸の機能を体の外から補う方法のことで、特に、医師以外の人でも、器具や薬品を使わずにできる処置のことで、1)つまった気道を開通させる気道の開放、2)呼吸がないときに行う人工呼吸、3)心臓が止まったときに行う心臓マッサージの三つから成り立っています。
けがや病気で呼吸が止まったり、心臓が動かなくなったときに、心肺蘇生法が行われないと、脳への酸素供給が断たれ、十秒以内に意識が消失し、三分から五分で脳障害がおこるとされ、生命をも保つことが出来なくなります。また、その後心臓や呼吸の働きが元に戻ったとしても、重篤な脳障害を残すことが多く、大きな社会問題となっています。
すなわち、救急患者が発生したときに、そばにいる人が正しい手順で心肺蘇生を施すことができれば、その救命率を更に高めることができるのです。事実、欧米では、救急患者の最初の発見者である一般市民が、心肺蘇生法を身につけていたため、救命率が日本より高いことが知られています。
二、授業への位置づけ
高校の科目「保健」に取り入れられた理由として、一つは、応急処置の技術を持っていることによって、今後、交通事故で重傷を負ったり、心臓疾患、特に心筋梗塞など応急処置をすることで助かる人は更に増えると思われること。もう一つはさまざまな人と共存していく上で、応急処置の技術を知っていることは市民の義務であると思われること。この二つの理由から、技術のみを教えるということではなく、応急処置の意義を高い次元でとらえて、高校で勉強させていく必要があるということで盛り込まれました。
この研修事業は、指導者となる高校の保健体育科教師すべてを対象に三年計画で行われます。
その内容は、応急処置の意義と実技(心肺蘇生法)で、特に、心肺蘇生法の持つ意義を十分理解してもらうためには、専門家によるスライドやビデオ、講義を予定しており、実技においては、訓練用人形で本格的に技術の習得を目指していきます。
三、平成三年度の開催について
本県における応急処置研修会は、平成三年度から五年度までの三ヵ年において、科目保健を担当する高校の教師すべてを対象に実施します。
本年度の研修会は、次のとおりです。
〇期日 平成二年六月三十四日(月)〜二十五日(火)
〇会場 郡山ユラックス熱海
○対象 公立高等学校保健体育科教諭百六十名(三年以内に全員受講する。)
○講義
講師 福島県立医科大学 奥秋 晟教授
福島県立医科大学 高次救急センター 管桂一 運営主任
○実技
講師 (十名)