教育福島0156号(1991年(H03)07月)-009page
能力や、人間としての在り方生き方についての自覚を高め、豊かな心をもち、たくましく生きる人間を育成することは、時代の要請である。
そのためには、子供の実態等を十分把握し、道徳の時間の指導を中心に、各教科、特別活動の指導を強化する努力が期待されている。
今回の改訂において、道徳教育では、次の点が強調された。
(1) 道徳内容の再構成
道徳内容の再構成に当たっては、その見直しの視点として、次の四点を挙げ、内容の再編成をした。
1)主として自分自身に関すること
2)主として他人とのかかわりに関すること
3)主として自然や崇高なものとのかかわりに関すること
4)主として集団や社会とのかかわりに関すること
(2) 道徳の内容の重点化
重点化に関しては、小学校低学年では、しつけなどの基本的な生活習慣、中学年では、日常の社会規範を守る態度、高学年では、公徳を守り公共に尽くそうとする態度を、また、中学校においては、人間としての生き方の自覚などに留意して、小学校低学年で十四項目、中学年で十八項目、高学年及び中学校で二十二項目に内容を整理し、重点化を図った。
これによって、子供の発達段階に応じた指導が充実して行えるものと期待できる。
(3) 国語教育の果たす心の教育
国語教育は、単に言葉を教える教育ではなく、心を育てるうえで果たす役割は大きい。このため教材を選ぶ観点として、生活を明るくし、強く正しく生きる意志を育てるのに役立つ教材。あるいは、生命を尊重し、他人を思いやる心を育てるのに役立つ教材。自然や美しいものに感動する心を育てるのに役立つ教材を挙げている。
(4) 特別活動の果たす心の教育
特別活動も心豊かな人間を育てるには大事な役割を持っている。特に学級活動では、望ましい人間関係とか、生活態度の育成、人間としての在り方生き方の指導の充実。学校行事の中には、例えば、勤労・生産・奉仕的な行事を新たに設けた。ここにも心の教育とのかかわりを重視した結果である。
2 基礎・基本の徹底と個性を生かす教育の推進
「豊かな心をもち、たくましく生きる人間」を育成するために、すべての児童生徒に欠かすことのできない知・徳・体の基礎的・基本的な内容は何かを明確にし、確実に身に付けさせる必要がある。この基礎的・基本的な内容の指導を徹底することによって、あるいはその過程を通して「個性を生かす」ことができると考えることができよう。
(1) 基礎・基本の確かな定着
すべての児童生徒に、基礎的・基本的な内容を確実に身に付けさせ、基礎学力の向上を図ることは、各学校がかかえる最大の課題であり、責務である。
したがって、今後は、各学校で実施している各種の学力診断テストや諸調査、さらには、教育センター発行の教科内容診断テスト等の実施結果を克明に分析して、自校の児童生徒一人一人の学力の実態と問題点を明確にし、日々の指導に生かす手立てを講じる必要がある。
基礎・基本の確かな定着を図るためには、次の点に一層留意することが望まれる。
1) 教材の系統・発展を的確にとらえ、基礎的・基本的事項を明確にするとともに、指導を徹底すること
2) 児童生徒の個人差に応じ、個性を生かした指導を工夫すること
3) 学習指導における形成的評価の在り方、情意面の評価の在り方を研究し、指導と評価の一体化を図ること
(2) 個性を生かす教育の推進
児童生徒一人一人のもつ能力や適性を最大限に伸ばし、個性を生かす教育の充実を図るためには、次の点に留意することが大切である。
1) 一人一人の能力・適性、興味・関心を的確にとらえること
2) 教師主導の一斉画一的な指導から脱し、児童生徒のものの見方・感じ方・考え方を大切にすること
3) 一人学習やペア学習、グループ学習など−一人人一人の個性が生きる学習形態を工夫すること
4) 個を生かす発問や板書の工夫などの指導方法の改善を図ること
5) 個に即した学習課題や到達目標を設定し、学習時間や学習量の調整を図ること
中学校グループ学習風景 福島二中