教育福島0156号(1991年(H03)07月)-035page

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身体・精神面の状態を探るために、AAI(学習適応検査)を実施しました。この調査からは、次のことが明らかになりました。

○学習態度、学習技術に不適応を示し、学習の意欲や計画などの画で自己理解ができていないこと。

○身体・精神面の健康度が伸びず、学習や人間関係に不適応を示していること。

 

二つの調査から、次のような指導援助の方向性をまとめました。

○生徒が目的意識を持って意欲的に学校生活を送ることができるように、自分のよさに気づかせながら、自己理解を深めさせる。

○調査から得た資料を基に、個に応じた指導援助を行い、一人ひとりが客観的な自己理解を深めることができるようにする。

 

指導援助を

まず、担任は生徒に自分自身のよさに気づかせ、自己理解を深めさせるために、朝のショートホームルームを利用して、担任から見た一人ひとりのよさについて、毎朝三分程度で紹介することを試みました。一人ひとりのよさを多く取り上げながら紹介することによって、学級にお互いのよさを発見していこう、伸ばしていこうとする雰囲気をつくろうとしました。中には、今まで自分で気づかなかった内容が紹介されると、自分自身を見つめ直したり、担任との面接で話題になるなど、新しい動きも見られました。また、担任も生徒理解を深めることができました。この試みは日数がかかりましたが、生徒の長所や適性などの自己理解を深めていくことに役立つことが確認されました。

 

また、一人ひとりの興味・関心、性格、特性などの自己理解を深めさせ、学校生活での目標や将来の目標を確立させることをねらいに、個別面談を継続的に実施しました。生徒はその結果を基に、自分自身を客観的に見つめることを戸惑いながらも、担任からの援助によって、客観的、具体的に自分自身を見つめることができるようになりました。十二月はじめのロングホームルームで感想文を書かせたところ、「自分の興味・関心に気づき、将来の目標が設定できた」「思わぬ適性に気づき、進路選択に悩んでいる」「自分の不得意科目の勉強法に気づき、勉強に励んでいる」「自分の適性に疑問を感じ、繰り返し面談を行いながら、更に自己理解を深めた」と様々ですが、自己理解を深め、意欲的に学校生活を送っている生徒が多く見られるようになりました。

 

更に、生徒に自分自身の姿を見つめさせたり、生き方の探究を促すことをねらいに、ロングホームルームを利用して、校内の先生方にお願いして講演会を実施しました。内容は「青春」や「生きる」をテーマにしたものです。自己理解を深めながら、自己確立を目ざさなければならない高校時代に、このように人間の生き方に触れ、自分自身について考えたことで、生徒の自己理解は一層深められたと思います。

 

そして生徒は

二学期末、学級には活気がみられるようになりました。

三学期に入ると、明らかに生徒たちの様子に変化が表れました。担任からの援助や自らの気づきによって自己理解を深めた一人ひとりが、二ニ年次の教科の選択」「進路の選択」「学習」などの学校生活での目標や、将来の目標を設定しながら、意欲的に学校生活を送ろうとしている姿がうかがえました。学級日誌にも「生き生きしている」「燃えている」などの言葉が多く見られるようになりました。

 

開発的な指導援助をすすめるためには、基本的欲求を満たすことができるように、教師のアイデアを生かし、工夫しながら児童生徒一人ひとりに即した指導援助を、意図的、継続的にすすめていくことが大切であると考えます。

 

 

 


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