教育福島0156号(1991年(H03)07月)-034page
教育センターから
教育相談のすすめ方
〜開発的な指導援助〜
教育相談部
開発的な指導援助とは、人間的なふれあいを基盤に「児童生徒が自己理解を図り、自ら向上を求め、将来の見通しを意識しながら自己実現に向かって自発的に進んでいくことができる」よう指導援助することととらえました。
児童生徒が将来への向上を目ざして、充実した学校生活を送るためには、〔健康〕〔安全〕〔所属と愛情〕〔自己理解〕〔自尊〕〔将来への向上〕などの基本的な欲求が満たされる必要があると考えます。
ここでは、「将来への向上心」を高めることを目ざしながら、「自己理解」を深めさせる指導援助の例を紹介します。
自己理解を深める指導援助の事例
実践の前に
昨年四月、A先生(三十六才・男性)は高校一年生(普通科・男子生徒)の学級担任となり、四十五名の生徒と共に新しいスタートを切りました。特別な問題もなく一学期が過ぎ、二学期に入って間もなく、担任は学級の生徒たちに何か物足りなさを感じました。確かに、教科担任からは「静かで授業のやりやすい学級です」とほめられていたのですが、生徒には生き生きとした高校生らしさが感じられないのです。
このような状況が生まれてきたのは、生徒たちが学校生活での目標を、明確にできないでいることが原因ではないかと考えました。
そこで、一人ひとりに目標をもって意欲的に学校生活を送らせたいという考えから、学級を見つめ直したところ、次のような課題に気づきました。
○客観的な資料を基に、一人ひとりに自己理解を深めさせること。
○一人ひとりに、自己理解に基づいた学校生活の目標や将来の目標を考えさせること。
資料の収集を
課題に基づき、担任は一人ひとりが「将来への向上」を目ざし、意欲的に学校生活を送るためには、自分に合った目標を設定するための自己理解を深める必要があると考え、担任の指導援助の方向性と、生徒の自己理解を図るための資料を、次のような方法で収集しました。
九月はじめ、一人ひとりの性格や適性を探るためにアンケート(意識調査)を実施しました。この調査からは、次のことが明らかになりました。
○自分の長所や適性などの自己理解が深められていないこと。
○自分の学校生活の目標や将来の目標が十分に考えられていないこと。
九月中ごろ、一人ひとりの学習態度・技術、