教育福島0156号(1991年(H03)07月)-051page
教育・イン・ザ・ワールド
中国の教育
国際化にふさわしい教育の話題をシリーズで掲載する「教育イン・ザ・ワールド」。
今回は、昭和六十一年から六十三年までの二年間、中国の西安外国語学院の教授として中国青年の日本語教育にあたり、中国の教育事情に詳しい県立保原高等学校教諭早水恒利先生からの中国教育事情の紹介です。
二年前の天安門事件は中国の学生たちの生の姿を世界に伝えました。だが、教育の実態はあまり知られていないようなので、西安での見聞をもとにQ−A方式でお伝えします。Q義務教育の制度はあるのですか。
A従来は一九五一年に公布された「学制改革に関する政務院決定」に基づいて、「普通教育」が行われていましたが、八六年に「中華人民共和国義務教育法」が制定・施行されました。満六歳で就学し、九年間の教育が義務づけられています。
Q学校制度は六・三制なのですか。
A基本的にはそうですが、中等教育は六年の伝統があるため、初級中学(三年)と高級中学(三年)は連続しています。
Q義務教育に学費はかかりますか。
A義務教育法には「学費の徴収を免除する」とありますが、実際には授業料・教科書代などがかかります。
Q全部公立なのですか。
A義務教育法では小学校と初級中学校の設置を地区の「各級人民政府」に義務づけています。同時に、「企業・事業の単位」にも学校の開設を奨励しています。ほとんどの大きな単位には従来から開設されており、これを子弟学校といいます。各単位が独自に設置しているので私立のような一面もあります。
Q上級学校はどうなっていますか。
A基本的には高級中学の三、大学の四となっており、六・三・三・四制です。
Q就学率、進学率はどうですか。
A「中国社会統計資料」一九八七年版(以下「資料」と略)によると、八五年の学齢児童就学率は九五・九%、初級中学への進学率は六八・四%、高級中学は三九・四%、大学は三一・五%となっています。小学校卒業者の三・一%が大学へ行くことになります。
Qなんのために大学へ行くのですか。
A幹部になるため、高収入を得るためと学生たちは答えます。しかし、農民籍の者は都市戸籍を得るためです。大学に入ることが農民籍から抜け出す唯一の道だからです。
Qイデオロギー教育はどう行われ、学生の意識はどうなっていますか。
A小学校から大学まで「政治」という科目があり、もちろん入学試験の科目にもなっています。しかし、大学生の場合はほとんどが共青団員ですが共産党員にはなりたがらないようです。「資料」では共青団員が八二三・三%、党員は四・七%となっています。情報量が格段に違い、外国に憧れ、「社会主義の優位性」に疑問を持つためと思われます。
初級中学1年生の家長会。黒板には全員の成績が書かれている。
単位の中の小学校(背景は同じ単位のアパート)