教育福島0157号(1991年(H03)09月)-033page

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特集3

学習指導の改善充実

養護教育課

 

一、はじめに

 

新しい特殊教育諸学校の小学部・中学部学習指導要領については、小学校学習指導要領及び中学校学習指導要領の改訂に準ずるほか、児童生徒の心身の障害の状態に応じた指導の一層の充実を図るという観点から改訂が行われました。

県教育委員会では、新学習指導要領の趣旨を踏まえた教育課程の編成と実施運営の充実を養護教育事業の柱の一つとし、学習指導の改善充実のための、種々の実践研究や講習会を実施しています。

 

二、学習指導における基本的考え方

 

盲・聾・養護学校では、教科学習が困難な子どもに対しては、日常生活のしつけや集団による遊び、さらに話しことばによるコミュニケーションの確立などの日常生活の基本となる学習指導を行っています。

一方、こうした学習も困難な子どもに対しては、生活年齢が進んでもより初期の学習が必要になってきます。この初期の学習指導は、単なる生活の指導や保育を意味しているものではありません。例えば、見て手を伸ばしたり、ものをつかんで引き寄せることが困難な子どもに対しては、外界の刺激を受けて調整のとれた運動を起こさせるような指導を行うことなのです。

それは、見たり、聞いたり、触れたりといったことが相互に関連しながら次第に人としての感覚として形成される過程であり、その過程(人間としての行動の成り立ちの基礎)を踏まえた教育的援助が必要であることを意味しているのです。

 

三、子どもの行動の理解

 

重い障害を持つ子どもの行動をみると理解に苦しむ行動が見られます。

・人に触れられるのを嫌がり、外界からの刺激を極端に拒否する。

・睡眠と覚醒のリズムが安定せず、ぐずることがある。

・自分の手を噛んだり、頭を床に打ちつけたりといった自傷行為や、同じことを繰り返す常同行動がある。

・突然笑ったり、泣いたり、奇声をあげたりする。

これらの行動は、個々の子どもたちにそれぞれ特徴的に見られ、そのタイプは実に様々ですが、共通しているものと、個別的なタイプに分かれるものがあります。

こうした子どもを指導する時、どうしてもこれらの行動に目を奪われがちですが、前述した人間としての行動の成り立ちの過程について考え、その中に障害児の行動を位置づけると、その子どもの行動がより広く見えるようになってきます。すると、それまで見えなかった見立たない行動が見えてきたり、その行動の見方が変わってきたりしてきます。

そこで、一人一人の子どもに具体的にどう働きかけたら、どう変わるのか、子どもの状況に合わせて、子どもの側、環境の側に何を準備すればよいのか、といった個々の子どもに応じた学習指導の改善と工夫が必要となってきます。

現在、盲・聾・養護学校では、学習指導の改善充実に向けて、様々な取り組みをしています。

(1) 盲学校では、学習指導の視点を探るための調査を実施し、その結果を実践に生かしています。

(2)聾学校会津分校では、学習内容・方法の改善充実に向けての校内研修を実施しています。

(3) いわき養護学校では、小・中・高等部の一貫した学習指導への模索を行っています。

(4) 郡山養護学校では、集団学習を効果的に進めるための実践研究がなされています。

以下、各学校での実践例について紹介します。

 

 

 


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