教育福島0157号(1991年(H03)09月)-034page

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盲学校の取り組み(盲学校)

 

1) 現状と課題

現在、児童生徒数は減少傾向を示し、障害の多様化や重複化が進んできている。一方、視覚障害者をとりまく社会環境は著しく変化しつつある。教育課程の基準の改善がなされ、理療師の資質向上が社会的に要求されている。

これらに対応するためには、より基礎的・基本的な内容を重視し、個性を生かす教育の改善充実を図ることが一層重要となってきた。

そこで本校における基礎学力の考え方を見直し、次のように定義した。

○障害者が一人の人間として自立するために必要な基礎的な学力

○それぞれの個性を生かし、自己実現のための基礎となる学力

〇社会の変化に主体的に対応し、生涯にわたって学習して行くための基礎となる学力

これらを本校の教育を進めるに当たっての新たな指針として位置付け「基礎学力を高めるための指導はどうあればよいか。」を課題として設定した。

2) 改善充実に向けて

改善充実の取り組みに当たっては、本校の教育目標との関連を十分図るようにして仮説を設定した。

「個々の児童生徒にそれぞれの障害の実態に即した配慮をもって指導すれば、児童生徒が生き生きと学習し基礎学力が向上するであろう。」

本校の児童生徒の実態は、障害の程度や障害をもったときの年齢など多種多様である。したがって児童生徒一人一人の比較的進んでいる側面を生かし、遅れている側面を補うよう、実態に即した指導をすることが重要であると考えた。

個々の児童生徒の実態を正しくとらえるには、盲教育に携わる教師が児童生徒を観察する視点を明確にすれば、より的確にとらえることができるであろうと考えた。これを本校職員全員一致した上での視点としてまとめることにして調査を行った。(表1)

その結果、集められた三百三枚の調査用紙を系統別にまとめ十二種六十項目に整理した。小項目ごとの評価は記述尺度法で点数化しコンピュータによりグラフ化したうえで検証授業に使用した。(表2)

また、改善充実のための研究組織及び推進については、全職員が研究に参加すること、小・中・高、一貫性をもって研究を進めること、研究が実践に結びつくこと、この二つを原則とした。

3) 実践例について

十二の研究プロジェクトとも、資料収集や教材教具の開発、記録の整理などが意欲的に実施された。また空間概念や言語コミュ二ケーションなどの面で共通課題の存在が認識され、広く他領域との連携を深める努力がなされた。次にその一部を紹介する。

○保健体育プロジェクト

高等部M子は、未熟児網膜症で全盲、方向感覚、身体運動能力などが遅れているようであった。この生徒の場合、音に対する感性がすぐれていることを生かし、帯状のビ二ール紐を束ね、手具として使用し、ダンスに取り入れた。M子は、めきめきと動きが活発になり、盲人バレー部に入るまでになった。手具として使用した教具が、前後左右の空間をとらえるのに有効に働き、ビ二ールの触れ合う音が感性を高め、表現や活動意欲へと発展したものと思われる。

4)終わりに

今回の学習指導改善充実のための研究は本校にとって活性化が図られ、大変有意義であった。それは教師の指導力の向上や児童生徒が生き生きと学校生活を送るようになりつつあることに現れている。今後とも

 

[表1]

「指導の視点を探るための調査票」

ア.個としての自立 調査値(   )

〇甘えた言葉を用いることがありますか。

(0)常に用いる(1)ときどき用いる(2)いいえ

○身の回りの整理整頓ができていますか。

(0)自分ではしない(1)しようとするができていない(2)できている

○何事をするにも人に頼ろうとしますか。

(0)いつも頼ろうとする(1)ときどき頼ろうとする(2)自分でやろうとする

○人の話を信じやすく影響を受けやすいですか。

(0)非常に影響を受けやすい(1)やや影響を受けやすい(2)いいえ

○逃避行動をとることがsりますか。

(0)ちょっとした嫌なことがあるとき(1)困難なことがあるとき(2)いいえ

 

イ. 社会的自立 調査値(   )

○友達との交際が上手にできますか。

(0)いいえ(1)ややぎこちない(2)上手にできる

○話し合いに積極的に参加しますか。

(0)参加しようとしない(1)消極的であるが参加する(2)はい

○クラスやグループの中で責任意識を持って行動していますか。

(0)責任意識がない(1)やや責任意識がある(2)はい

○他の人を認めて行動することができますか。

(0)人のことは考えない(1)自分を立ててくれる人のみ認める(2)できる

○周りに注意を払って行動することができますか。

(0)自己中心的である(1)独りよがりの行動をとることがある(2)できる

 

[表2]

-A児の場合-

られる。他児の作品に興味をもたせるなどの配慮をしながら指導していきたい。

●学習能力が高く、意欲、態度も安定している。しかし、対人関係においてやや問題がみられる。他児の作品に興味をもたせるなどの配慮をしながら指導していきたい。

 

 

 


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