教育福島0160号(1992年(H04)01月)-033page

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が、隣へ隣へと描いていきましょう。ジグソーパズルのように描いていけばいいです。また、手だとか顔などと考えないで、線だけを見て描いていきましょう。

・描き終わったら、できた絵を逆さにして普通に見えるようにしましょう。びっくりするほど生き生きとした線で描けていますね。

★考察

初めての体験なのでとまどう子供が多かった。一回目は逆さのなぞりがきをさせ、二回目は横に置いて描かせると、無理のない段階的指導ができる。ただ、なぞって描くと隣へ隣へと線をつなげる意識より輪郭線をなぞる傾向が強いので注意が必要である。

3) 事前の取り組みを(五感を使った体験活動)を重視した図画工作科の授業

・ 心に残ったこと「小鳥の巣箱」

○題材の目標

小鳥の巣箱かけで体験したことの中から、心に強く残った場面を選び表したいことがよくわかるような画面の構成や彩色を工夫して絵で表現することができる。

○事前の取り組み

旧校舎の廃材を利用して小鳥の巣箱を作り、裏山の本にかける活動を子供主体に取り組ませる。地域に住む小鳥たちのために家を作ってあげようとする気持ちを大切にする。

★考察

実際に体を使う体験を重視して造形表現したことにより、子供たちの五感が鍛えられ、主体性・積極性が少しずつ育ってきた。また、絵の具のじかがきの表現にも慣れてきた。

・民話をつくろう「五杉木(ごさいぼく)の天狗」

4) 手の機能の回復と五感の再訓練をさせる生活の中の手だての工夫(学校行事、特別活動、遊びなど)

★考察

様々な時と場面で直接体験を重視して活動させてきたことにより、手の機能の回復と五感の再訓練をすることができたように思う。しかし、その変容をとらえる手だてが明確でなかったために、あいまいさが残る結果となってしまった。第二次年の課題である。

 

八、研究結果及び考察

 

八、研究結果及び考察

 

実践期間が短いので、明確な成果といえるものは少ないが、仮説にもとづく実践により得られた作品や資料、感想などを分析すると、次のようになる。

(1) 右脳を刺激する造形練習を継続したことにより、ものを見る目が鋭くなりイメージカ、図形的認識力、発想力などが以前より高まってきた。おもしろカードの集計結果を見ると、色からの発想や○からの発想で大きくポイントを上げている子供が多い。

(2) 事前の体験的取り組みを大切にした図工の授業をしたことにより主体的に物事に取り組めるようになり、絵画的認識力も少しずつ高まってきた。それは、学習アンケートの「何をかくか決める」ということが五月には三十六パーセントが苦手意識を持っていたのに、一月には二十六パーセントまで減ってきたことからもいえる。

(3) 学校生活の中でいろいろな行事や活動、遊びの中で手を使った活動、五感を使った取り組みを大切にしてきたので、手先が少しずつ器用になり、物事に対する感受性も以前より敏感になってきた。

また、右脳を刺激する発想練習の課題を開発すること、パターン認識力、空間認識力も高めるための課題の開発、立体・造形遊び的な取り組みの導入等が二年次の課題になるであろう。

 

3年 女 「五杉木の天狗」(スチレン版画)

 

3年 女 「五杉木の天狗」(スチレン版画)

 

九、結論

 

直接体験を重視した環境の中で右脳を訓練する絵を描いたり五感や手の働きを大切にした図工の授業をしたりすることによってイメージカや図形的認識力、絵画的認識力などの基礎的な表現能力が養われつつある。

 

 

 


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