教育福島0161号(1992年(H04)02月)-006page
提言
若き学究の徒に望む
東北大学長
西澤潤一
受賞された皆さん方、おめでとう。
猪苗代湖の岸に、野口先生のお生まれになったお家があるんですが、あのようなところで育った人が、今、世界の歴史の中に名前を残すような立派な仕事をしたんだということを是非忘れないでください。
研究を続けて世界に名前を残すような人というのは、決してそんな特別な生まれでもなんでもない。あなたがたの隣に、いや皆さん方自身が何十年後かに、こういうすばらしい仕事をする人になっている可能性が十分にあります。心理学の先生がいろいろ調べられたところによれば、立派な仕事をした人というのは、必ずしも、学校の成績があまりいい人ばかりとは限っていないようです。
東北大学の最初の頃に、大変立派な仕事をなさいました本多光太郎先生は、愛知県の岡崎のお生まれですけれども、小学校時代は劣等生だったんですね。今、本多先生の誕生日に、岡崎の小学校で学芸会をやっているんですが、その時に、本多光太郎役になった子供さんはどういう格好をして出てくるかというと、鼻の下に絵の具で二本の線を引いて出てくるんですね(会場笑い)。しょっちゅう鼻をたらしてて、乾燥してひび割れが入っているようになっているわけで、そういう子供時代を岡崎で過ごされた本多先生が、大変立派な仕事をなさった。
なぜ、そういうことができるかということですね。
それは、頭がいいに越したことはありませんが、決して学校の成績が良くなかった人でも、ある日目覚めて、無我夢中になって仕事に集中していくということができた時に大変立派な仕事をするんだということが、これは東京工業大学の心理学の教授をしておられた方の研究成果にあるわけで